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世界からお届け!SDGs通信 香港編。教育局が低所得者を支援

毎号、世界中から届いた旬の話題を紹介しているBRUTUS本誌の「ET TU, BRUTE? CITY」から出張企画。世界中の約30都市から、今一番ホットなSDGsに関する取り組みをお届けします。今回は香港から!

text: Miyako Kai / edit: Hiroko Yabuki

モバイル機器購入費用を補助!

全人口の所得上位10%が月収200万円超え、下位10%は5万円程度(2020年調査)という極端な貧富の差がある香港。さらに世界最高額の地価が招く深刻な住宅問題があり、自宅に勉強部屋どころか教科書を広げるスペースもない家庭も少なくない。

一方で、低学年から宿題と試験に追われる厳しい教育制度が功を奏しているのか、平均学力調査は常に世界トップ5に入る好成績を収めている。家庭での長時間学習を支えているのは、公立図書館などの公共施設や、団地内の共用施設に設けられた年中無休の学習室で、多くの図書館では、平日は22時まで利用が可能だ。

コロナ禍の間、自宅での学習環境を整えるのが難しい、貧困層にいる児童生徒をさらに苦しめたのが、厳しい規制下で2020年には4カ月間と長期化した閉校と、その間のオンライン授業。香港の文部科学省にあたる教育局は、児童生徒のいる低所得層の家庭向けに、通信環境設備の購入を支援する補助金制度を展開している。

その内訳は、モバイル機器や通信用アクセサリーの購入に向けた基礎支援が、生徒1人につき4,700香港ドル(約80,000円)。さらに必要に応じて、Wi-Fiルーターやモバイルデータカード購入のために年間800香港ドル(約14,000円)を支援するという。

格差から生じた教育への悪影響緩和には焼け石に水な政策ではあるが、これにより日々のニーズを何とか満たせる家庭も多く、現実的な支援策であったことは確かだ。