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世界からお届け!SDGs通信 ヘルシンキ編。熟練木工職人が創立した、老舗家具メーカーの取り組み

毎号、世界中から届いた旬の話題を紹介しているBRUTUS本誌の「ET TU, BRUTE? CITY」から出張企画。世界中の約30都市から、今一番ホットなSDGsに関する取り組みをお届けします。今回はヘルシンキから!

text: Eri Shimatsuka / edit: Hiroko Yabuki

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伝統的な手法を取り入れ、作り手と使い手、
そして環境に優しい家具を生産

〈Nikari〉は1967年に木工職人カリ・ヴィルタネンにより創業したフィンランドを代表とする老舗家具メーカーだ。当初はアルヴァ・アアルトをはじめ、多くの建築家と家具作りに取り組んできた。90年代に芸術家が多く暮らすフィスカルス村に拠点を移転し、Kiasma(ヘルシンキ現代美術館)をはじめ、美術館や学校など公共施設で使用される家具を製作する。

まだサステナビリティという言葉が普及するずっと以前から、環境や人に配慮した物作りを徹底している同ブランド。70年代には作り手の健康を守るため、昔ながらのコーティング方法をヒントに、作り手にも使い手にも、そして環境にも優しく、美しい経年変化も楽しめる、オイルと石鹸を使った独自の仕上げ方法を編み出した。2014年からは自社の水力発電を使い、完全にクリーンエネルギーに転換。木は再生可能なエネルギーではあるが、積極的に植林事業に寄付することも忘れない。例えば、WWFに募金し、グローバルな視点から森の多様性を保つ活動をサポートしている他、フィンランド国内の森を守るため、自然保護団体に毎年寄付をしている。

1000年以上前から伝わる釘を使わない様々な接合方法を用いるのが〈Nikari〉の家具の特徴だが、息の長い家具の条件は、機能性はもちろんのこと、フォルムの美しさが不可欠であるという信念を持ち、今日も真摯に物作りを続けている。

2010年からは創業者の意志を継ぎ、培ってきた技術を次世代につなげ、よりグローバルに展開することを目的に、木材開発とビジネスに関わっていたヨハンナ・ヴオリオ氏をCEOに抜擢。その結果、ジャスパー・モリソンをはじめ、世界で屈指のデザイナーたちにデザインを依頼し、現代の暮らしになじむ家具が次々と誕生した。コロナ禍では、質が高く、長く使えるという意味でもサステイナブルな家具を求める人が増えたことから、生産数も伸びているという。

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