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世界からお届け!SDGs通信 トロント編。男女共に理解を深める月経教育アプリケーション

毎号、世界中から届いた旬の話題を紹介しているBRUTUS本誌の「ET TU, BRUTE? CITY」から出張企画。世界中の約30都市から、今一番ホットなSDGsに関する取り組みをお届けします。今回はトロントから!

text: Hatsuki Matsui / edit: Hiroko Yabuki

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月経は「秘密の何か」ではない!タブー視せず男女共に学びを

2018年にインドで制作された25分のショートフィルム『ピリオド -羽ばたく女性たち-』が、2019年アカデミー賞の最優秀短編ドキュメンタリー賞を受賞した。月経について語ること自体がタブー視されているインドの村に、月経用ナプキンを作る機械がもたらされる。それから女性に限らず男性にまで変化が起き、村全体に小さな革命が起きる。現在に至るまで、月経は“秘密の何か”として男性が触れることがタブーのように捉えられてきた。このドキュメンタリーでは、月経のタブーを男女共に乗り越えることで、新たな需要や仕事、希望を生み出していく。

〈FREE PERIODS CANADA〉は、そんな社会的な認識の変化と歩調を揃え、月経にまつわる問題を乗り越えるべく活動するバンクーバーの非営利団体だ。もともとはUBC(ブリティッシュコロンビア大学)の学生サークルで、月経による不平等をなくし、社会に変化を起こすために生まれた。大学の生徒に無料で生理用品を供給し、講義を開催し月経への理解を促進してきた。2021年からは「CHARMS」というWEBアプリケーションを立ち上げ、誰でも無料で良質な月経教育コンテンツにアクセスできる。男性はもちろんのこと、あらゆる性別に向けたオンラインプログラムも月に数回開催している。

創設者のZeba Khan氏は、月経貧困について学んだことがきっかけで、2016年に活動を開始した。カナダ公衆衛生協会によると女性が生涯に月経用品に費やす金額は60万円以上。国連人口基金によると、南スーダンやフィリピンでは月経用品を購入することができず雑巾や木の葉、新聞紙をナプキン代わりに使用し、清潔なナプキンの購入資金に充てるために望まない性交渉をする女性がいる。カナダ国内においても、特に先住民族の地域には、環境や費用の問題で生理用品が手に入らず、月経期間中は学校を毎月休まなくてはならない学生がいる。

誰もが好んで月経になるわけではない。2022年にWHOは「月経は衛生問題ではなく人権問題」であると声明を発表した。カナダでは2023年12月から図書館などの公共施設や政府の規制を受ける雇用主に対し、生理用品の無料配布を義務付けている。

「男女平等」と言葉だけが先走っては身体差の壁に行き止まる。〈FREE PERIODS CANADA〉はむしろその差に目を向け、積極的に違いを認め合うことで知識や心理面からお互いの溝を埋めていくのだ。

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