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世界からお届け!SDGs通信 バンコク編。教育格差を埋めるべく設立された奨学金

毎号、世界中から届いた旬の話題を紹介しているBRUTUS本誌の「ET TU, BRUTE? CITY」から出張企画。世界中の約30都市から、今一番ホットなSDGsに関する取り組みをお届けします。今回はバンコクから!

text: Chinami Hirahara / edit: Hiroko Yabuki

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教育格差を埋めるべく設立された
首相監督下の〈平等教育基金(EEF)〉

バンコクでは何台もの高級車が道を行き交い、高級なレストランで食事やパーティを楽しむ富裕層がいる一方、片隅のスラムではストリートチルドレンが生きるために日銭を稼いでいたりする。また、山岳地帯など田舎では国籍すらなく教育を受けられない子供たちもいる。極端な教育格差や経済格差を少しでも減らすべく、政府主導で設立された〈EEF〉とは?

タイの教育省の調べによると、現在教育を受けていない子供はタイ国内に67万人以上(3〜17歳)、そしてストリートチルドレンはバンコクだけで3万人にものぼるという。かつて「世界一不平等な国」などと揶揄されるほど貧富の差が顕著なタイでは、経済的事情で学校へ通うことができない子供が想像以上に多く存在する。2018年、激しい教育格差をなくし、全ての子供たちに平等に教育の機会を与えることを目的に設立されたのが〈平等教育基金(EEF)〉。内閣から任命された教育省、財務省、内務省など5つの省庁からの専門家たちが中心となり構成されているが、政府によって生まれたこのような組織は世界初となる。

具体的な活動としては極貧にある約57万人の学生を対象に、現金支給支援を行う。製造業や経済など優先分野の職業プログラムを学ぶための「職業革新奨学金」、大学の教育学部で学ぶための貧困地域の学生を対象にした「ティーチャーラックローカル奨学金」、条件付きの3種の現金給付、優秀な学生を対象とする「真の奨学金」の3種だ。
所得格差や地域格差などで学ぶことを断念せざるを得ないという悲惨な状況をなくし、質の高い教育を平等に受けられるようにサポートすることで優秀な人材を育て、将来的には経済的自立を実現し、貧困問題を緩和していくことが目的だ。

平等教育基金(EEF)

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