「はかない芸術」を囲む円卓がシンボルの小空間。永福町〈中華可菜飯店〉

仲間と「中華を食べに行こう」となったとき、しばしば挙がるのが「ワインがある店がいいよね」という声だ。同時に、近年「ワインが楽しめる中華」の店はバリエーション豊かに増え続けている。背景を探りつつ、個性を競う話題店〈中華可菜飯店〉を紹介しよう。

photo: Jun Nakagawa / text: Kei Sasaki

永福町の〈中華可菜飯店(ちゅうかかなはんてん)〉店主・五十嵐可菜さんは、独立準備中に働いた〈湯気〉でナチュラルワインを知り、初めてワインをおいしいと感じた。「一つ置いてみるか」と、ライトな気持ちで店のドリンクメニューに加えたが、「本当にワインに感動したのは店を開いてからで、そのときのことはくっきり覚えています」と、熱っぽく話す。ワインはフランス・ラングドック地方の生産者〈ラ・ソルガ〉が醸す白で、さまざまに複雑な香りを明確に感じたという。それからブドウ品種や産地に踏み込むようになり、ぐんぐんとワインを充実させて今に至る。コースが基本だがワインを気軽に楽しんでほしいと、点心とワインのアラカルト営業日を設けたほどだ。

鶏肉の唐辛子炒めとセロリと豚肉の水餃子
右、鶏肉の唐辛子炒め1,900円。左、セロリと豚肉の水餃子800円。

五十嵐さんは京都の美大でデザインを学んでいた学生時代、「料理ができなすぎる」という理由で選択制の精進料理クラスを受講した。そのときの講師の「料理は一番はかない芸術です」という一言が刺さり、料理へ宗旨替え。身近でありながら、食材に調味料と果てしなく深い世界が広がる中華を選び、京都、東京の有名店での修業を経て独立した。

店のシンボルとも言える円卓は、美大の先輩の〈イエイスタジオ〉永田幹さんに依頼。内装からロゴまで、美大時代の先輩や友人を頼り作り上げた店は、デザインの小さなショーケースのようで、中華好き、ワイン好き以外をも惹き付けている。

ワインに詳しくなくてもいい、高級店を選ばなくてもいい。「ワイン×中華」の世界は、今やこんなにも身近に、豊かに広がっているのだ。

自由に楽しむ場に活気が生まれる。中華×ワインの先駆者、四谷三丁目〈新楽記〉

「ワイン酒場」を拡張する点心師×ソムリエのタッグ。幡ヶ谷〈yum〉

コースでも、アラカルトでも香る中華と選べる酒の全方位型。木場〈香噴噴 XIANG PEN PEN〉

「ワイン×中華」最前線。フラワーショップも併設する新中野〈湯気〉

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