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サハラ砂漠からエーゲ海まで、親子旅で14カ国。再び行きたい国ベスト3

「長旅に出たいから」という理由で、30歳のときに夫婦そろって会社を辞め、中南米とインドを回った。帰国後に子どもが誕生して、それからは親子3人で出かけるように。これまで家族で旅した14の国の中から、とくに親子で行ってよかった3カ国ピックアップ。

Photo&Text: Tabioto

子どもは“歓迎される存在” 

初めての育児で毎日ヘトヘトだった。出産前、「子どもが生まれたらどこに行く?」とはしゃいでいたのが、ずいぶん昔のことのように感じる。だが、旅立ちのときは突然やってきた。ひょんなことから、台湾に行くのはどうかという案が浮上したのだ。そのとき息子は生後9カ月。まだ小さいから難しいだろうと考えていたはずなのに、気がつけば、夜な夜な“行く前提”で入念にプランニングをしていた。そして、1カ月後には台北に向けて飛び立っていた。

初めての親子旅で何がいちばん印象的だったかといえば、台湾の人たちは赤ちゃん連れにやさしいということ。息子を見てはにっこり微笑む。地下鉄に乗車すれば、席を譲ってくれる人がすぐに現れる。とにかく皆、親切だった。子どもといっしょに旅するのって、最高じゃない?

それからは年に一度、旅に出ることが家族最大のイベントになった。どの国も面白くてエピソードに事欠かないが、とくに印象に残っているのがこちらの3つの国だ。

モロッコ冬のサハラ砂漠へ向かって走り出せ

旅音 サハラ砂漠

3歳までに4度の親子旅をして経験値を積んだので、そろそろ遠い国に出かけても、ということで選んだモロッコ。自宅から現地まで、丸一日かかった。大人も子どもも楽しめるという理由で、サハラ砂漠は真っ先に行くことに決めた。

旅音 サハラ砂漠

予約したホテルはサハラ砂漠がすぐ目の前というロケーション。このとき4歳だった息子はでっかい砂場めがけて裸足で駆けていく。「待ってぇ!」と叫ぶ親の声は、砂に吸収されて子どもまで届かない。仕方がないから、大人も全力で走ってついていく。

辺り一面、砂だらけのところまでたどり着いたら、ひたすら砂の感触を楽しむ。スコップで砂を掘りまくったり、砂山を転がって下りたり。こちらを振り返ることなく、好き勝手にずんずん進む息子の後ろ姿は、とてもたくましかった。

ギリシャ石造りの家々が並ぶ山間部のhidden gem

旅音 ギリシャ

エーゲ海の島々や古代遺跡が有名なギリシャ。これらの定番スポットも素晴らしかったが、忘れられないのが、アルバニアとの国境にほど近いザゴリ地方だ。国内有数のミネラルウォーターの産地で、緑豊かな森と断崖絶壁の岩山が織りなす不思議な景観は、どれほど眺めていても見飽きることがなかった。

旅音 ギリシャ

ザゴリでは人の手が入ったものはほぼすべて石造り。道路や橋、そして民家も。ブロック状の石を積み上げた壁、薄くて平べったい石板を重ねた屋根。中世の時代から、この町並みはきっとずっと変わっていない。

旅音 ギリシャ

宿泊先であるメガロパピンゴの村から歩いて約30分のところには、“ロックプール”と呼ばれる奇岩に囲まれた天然のプールがある。ここにはいったいどこからやってきたのかと思うほどたくさんのツーリストがいて、水遊びに興じていた。息子(当時8歳)も急いで洋服を脱ぎ、即座にダイブ。ただ、予想以上に水が冷たかったようで、その後は直射日光がガンガン当たる岩の上に寝転がってしばらく動けずにいた。

タイ:訪れるたびに好きになる楽園

我が家史上最もリピート率の高い渡航先、タイ。行くたびに新しい発見があり、でもノスタルジックな雰囲気もしっかり残っていて、その混沌ぶりがたまらない。

旅音 タイ

タイで雲海が見られると知ったのは、息子が6歳の頃。彼にとっては3度目の訪問だった。北部の町、チェンライから車で2時間ほど。ラオス国境近くにあるプーチーファーは、11月から1月の、よく晴れた早朝に真っ白な雲の連なりを目にすることができる。ビュースポットの崖には大勢の人が詰めかけていて、日の出を今か今かと待っている。

もうすぐ太陽が顔を出す、という瞬間を待たずに下山するタイ人が結構いて、ちょっと驚いた。ここでは、ご来光を拝むのはスペシャルな体験ではないのだろうか。

旅音 タイ

楽しい、おいしい以外に、タイの素晴らしいポイントがもうひとつ。子どもにとにかくやさしいのだ。これまで訪れた国でも本当によくしてもらったが、タイは別格。あちこちでかわいがられて、息子の頭の中には、タイ=居心地のよい国とインプットされているに違いない。

世界的なパンデミックが起こる直前の2020年1月にも、私たちはタイを旅していた。そのあとからずっと、海外に出かけられずにいる。現在、息子は11歳。中学校に上がると、親子で旅をするチャンスはなくなるかもしれない。

好きなときに好きな場所へというのが当たり前ではない日常に突入して以降、世界中の多くの人がきっとこう思っているだろう。「どこでもいいから、早く旅に出たい」。