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写真家、チェン・マンが撮った坂本龍一

レコードジャケット、広告、雑誌取材など、世界中の写真家たちが、坂本龍一の姿をカメラに収めてきた。北京で活躍する写真家、チェン・マンは、レンズ越しに坂本をどう捉えたのか。彼との出会いや思い出のエピソードと合わせて、彼女が選んだ特別な一枚を紹介する。

本記事は、BRUTUS「わたしが知らない坂本龍一。」(2024年12月16日発売)掲載の内容を拡大して特別公開中。詳しくはこちら

edit: Ko Ueoka, Naoko Sasaki

——選ばれた写真について教えてください。

陳 漫(チェン・マン)

撮影現場に現れた彼の姿は、1度目の癌治療を経て痩せていても、どこか凛としていました。体にぴったりと合った黒のマットなシャツに、銀白色の髪が整えられ、太い黒縁眼鏡の両側に整然と流れていました。現場で最初に彼自身の曲をかけると、すぐに笑って首を振り「別の曲にしよう」とおっしゃいました。そこで私が中国の古筝(こそう)の曲をかけると、彼は静かに目を閉じ、真剣に耳を傾けていました。そして撮影が始まりました———。

私は、坂本龍一という人を“その瞬間ごとに”切り取るために、さまざまな露光時間を試してみることにしました。1/1000秒、1/100秒、1秒……そして10秒、さらには1分間。旋律が時間の中で刻まれるように、彼の姿もまた時間に刻まれ、それぞれの人々の記憶の中に生き続けるように。

——坂本龍一を知ったきっかけは?

陳 漫

『戦場のメリークリスマス』という映画がきっかけでした。

——坂本龍一との思い出は?

陳 漫

「月を見上げることを忘れないで」という彼の言葉が心に残っています。

——坂本龍一で最も好きな作品は?

陳 漫

『A Flower Is Not A Flower』。これは、私のNHKドキュメンタリーのエンディングに使用させていただいた作品でもあります。

——あなたにとっての坂本龍一とは?

陳 漫

時間に託された存在です。彼の人生の最後の時期において、時間はすべてを超越していました。

——坂本さんの残した作品(レガシー)を後世の人にどう向き合ってほしい、体験してほしいと思いますか?

陳 漫

私が彼を撮影したのは2018年3月のことです。その後、この世界は大きく変化しました。しかし、私たちにはまだ坂本龍一と『Merry Christmas Mr. Lawrence』があります。クリスマスになるたびに、多くの人が私と同じようにこの曲を思い出すでしょう。そして、何年先でも、この曲が新たな記憶を運ぶ存在であり続けることを願っています。それを耳にした人たちは、坂本龍一がどんな人だったのかを調べたり、彼の他の音楽、映画、日記に触れたりするのでしょうか。その先を見守りたいと思います。