あつまれ!みんなの猫フォトコンテスト
photo: Wataru Kitao / styling: Shihomi Seki / text: Kohei Hara
初出:BRUTUS No.1017『猫になりたい。』(2024年10月1日発売)

高城れに
集まった写真、すべて本当に素晴らしかったです。猫は人間みたいに「このポーズして」と言っても通じない。だからこそ、日常の一瞬を切り取った写真が愛らしくて、飼い主さんから猫ちゃんへの愛情を感じる写真ばかりでした。
池田晶紀
思い通りにならないこと自体が猫の面白さ。その野性的な日常をいかに楽しんでいるかが、皆さんの写真にも表れていたと思います。その愛くるしさに思わず笑ってしまったものが多かったですね。
田部井美奈
どれもクオリティが高くて、絞るのにはとても迷いました。その中でも、私は普段見慣れない写真により強く惹かれたと思います。あとは、人間の「猫かわいい」という視点以上に、猫がただ幸せそうにしていたり、“猫本位”だったりする写真を思わず選んでいましたね。
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高城れに/トップス41,800円、スカート176,000円、ブーツ58,300円(以上Maison MIHARA YASUHIRO TEL:03-5770-3291)、イヤーカフ 二連13,200円、イヤーカフ ハート11,000円、リング ネコ9,900円(以上warmth ルミネ新宿店 TEL:03-6304-5994)、ネックレス21,450円、リング ハート15,950円(共にJustine Clenquet/unigem info@unigem.jp) -

池田晶紀 -

田部井美奈

文句なしで金賞が決定!芸術的にも優れた一枚
池田
まずは膨大な点数の中からおのおのグランプリにふさわしいと思う写真を5枚ずつ選んでみましたが、被っているのが結構ありました。
高城
池田さんと田部井さんが選んでいるマチ、見逃していましたがかなりいいですね……。ガラスの素材も相まってアート作品に見えます。
田部井
これは奇跡の出来映えですよね。食器棚に猫が入ってピクセルっぽい見た目になっていることがまず面白いですし、それを撮られていることにまったく気づいていない様子の猫にもおかしみを感じます。金・銀・銅賞は、写真的に優れているという視点を特に大事にしてもいいかもしれません。
池田
写真のコンテストという点では、意外性含め抜群ですね。“かわいそう”という言葉の語源は“かわいい”から来ていると言いますが、ちょっと不憫に見えるのがまたいいのかな。
田部井
猫のいじらしさが垣間見えますよね。
池田
「かわいいでしょ?」って自らアピールしてくる猫もいる中で、この子は自分のかわいさに気づいてないのがいいんですよね(笑)。
高城
本人が「なんですか?」って言っている吹き出しが見える(笑)。これは金賞ですかね!
金賞

「猫の収まりのよさが存分に生かされていて、無意識のかわいさに惹かれました」(田部井)。「ぱっと見は本物の猫に見えない。でも状況がわかるとすごく面白いです」(高城)。「パンチがあって、写真的にも一番」(池田)
田部井
満場一致ですね!銀賞と銅賞が難しいですが、高城さんと池田さんが選んだ白玉はとてもいい写真だと思います。
池田
これを撮れたのは大したもんだと思います。猫は普通、雪の中を散歩しないので。
高城
こんな場面見たことないですよね⁉頭や体にも雪がついていて、はしゃいでる感じもいいです。
田部井
飼い主に連れてこられているというより、自ら進んで雪に向かっている躍動感がかわいいですよね。これは銀賞でしょうか。
銀賞

「雪の中を散歩しているシチュエーションが衝撃!」(高城)。「雪の中で遊ぶのが好きな珍しい猫ちゃんですね。なかなか見られない写真です」(池田)。「北国で育ったのでしょうか。勇ましさを感じます」(田部井)
高城
いいと思います!次は銅賞ですが……“フォトコンテスト”という点を鑑みれば、池田さんが選んだふくはほかにあまりないクールでミステリアスな雰囲気が魅力的です。
池田
猫は怖がってしまうのでスマホではなくしっかりしたカメラで撮影するのはかなり難しい。でも、この写真はライティングもして大事に撮っているのがいいと思いました。
田部井
応募者によると、ベンガルが猫草と戯れている様子とのこと。絵画的で美しいです。それでは、銅賞はふくで決まりにしましょう!
銅賞

「猫は撮り方次第では絵画的にもなる。猫種と背景が合っています」(池田)。「スナップではなく、れっきとした“猫写真”の風格がありました」(田部井)。「猫のかわいらしい一面とはまた違う、神々しい雰囲気」(高城)
グッドフォトには撮影者と猫の素敵な関係性が表れる
池田
ここからは部門ごとの入賞作品を決めていきましょう。まず部門のくくりから考えたいですが、ボーやことりのように、一瞬を切り取ったいい写真がたくさんありました。

「昭和のどろぼうねこ!って昭和関係ないけど、勝手に妄想してしまうね」(池田)

「最高に良い瞬間。全力で遊ぶ友達がそばにいる、とても幸せな猫です」(田部井)
高城
「ナイスショット」な写真たちですね!私はすももじろうの、中身が53歳くらいのおじさんにしか見えないこの場面が好き。ミコとネモの、ヨーロッパ的な風景の中で巻き起こるバトルも面白いですね。

「お題をつけるならば“猫様の皮を被った50歳。会社帰りのサラリーマン!”」(高城)

「写り込んでいる風景も相まって、こっそり目撃した感じが良いです」(田部井)
ナイスショット部門入賞
決定的な瞬間から一触即発?な場面まで
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ぶー(3歳)
「おい、漫画かよ!って言いたくなるポーズもさることながら顔だよ、顔」(池田)
ぶー(3歳)
「おい、漫画かよ!って言いたくなるポーズもさることながら顔だよ、顔」(池田) -
ししまる(11ヵ月)
「大好きなししゃもをいただきーっ!猫様本能むき出しのお茶目な一枚!」(高城)
ししまる(11ヵ月)
「大好きなししゃもをいただきーっ!猫様本能むき出しのお茶目な一枚!」(高城)
池田
豊満な体の猫や奇抜なポーズが特徴的な「わがままボディ」部門も作りたいです。鰤なんかすごいですよ。

「どうしたんですか?骨格すごいことになってますよ〜」(池田)
田部井
まさしく猫本位。人間を幸せにしてくれますよね。ちゃらのような収まってる姿もかわいいです。うちの子も新しく箱や家具を買ったり空いた段ボール箱があったりするといつもうれしそうに入るんです。たまらない気持ちになって私もよく写真を撮ります。
高城
わかります!ライブで遠征があると、荷物を詰めている時に家を留守にすると気づいて、キャリーケースの中に入ってくることがあって。そのまま連れていきたくなります(笑)。
わがままボディ部門入賞
柔軟な猫たちの自由自在な体勢に惚れ惚れ
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ちゃら(5歳)
「足を広げ無防備な姿をしながらつぶらな瞳で真っすぐ見つめる姿にキュン」(高城)
ちゃら(5歳)
「足を広げ無防備な姿をしながらつぶらな瞳で真っすぐ見つめる姿にキュン」(高城) -
らてお(1歳)
「ふわふわ祭りグランプリ!もふもふ部門も1位!」(池田)
らてお(1歳)
「ふわふわ祭りグランプリ!もふもふ部門も1位!」(池田) -
TAVI(3歳)
「毛並みとフォルムがピカイチ。座ったままじゃれてる横着さがかわいすぎます」(高城)
TAVI(3歳)
「毛並みとフォルムがピカイチ。座ったままじゃれてる横着さがかわいすぎます」(高城) -
カイ(5歳)
「妖艶ですね。体がぬるっと背景に溶け込んでいるのも素晴らしいです」(田部井)
カイ(5歳)
「妖艶ですね。体がぬるっと背景に溶け込んでいるのも素晴らしいです」(田部井) -
ルカワ(1歳)
「猫の自在なる身体能力を見せつけられました。お腹を撫でたいです」(田部井)
ルカワ(1歳)
「猫の自在なる身体能力を見せつけられました。お腹を撫でたいです」(田部井)
田部井
あとは、猫の表情と飼い主の視点が優れている「まなざし」の部門もあっていいですよね。
高城
猫の目ってすごく独特で、光の当たり方によって表情や形が変わって見えるんですよね。ちびのように、横から見るとビー玉のようで。

「猫様の横から見た角度フェチです。額から顎下のラインがたまらなく好き」(高城)
まなざし部門入賞
撮影者と猫のまなざしが交差してほっこり
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とい(1歳)
「おっちゃん!なのか?おばちゃん!なのか?猫生相談お願いします」(池田)
とい(1歳)
「おっちゃん!なのか?おばちゃん!なのか?猫生相談お願いします」(池田) -
長門(ながと)(4歳)
「中身出てきちゃったね。でも、いいよ〜かわいいよ〜」(池田)
長門(ながと)(4歳)
「中身出てきちゃったね。でも、いいよ〜かわいいよ〜」(池田) -
モネ(2歳)
「この表情は通常運転なのか、不意なるものなのか。良い牙をお持ちです」(田部井)
モネ(2歳)
「この表情は通常運転なのか、不意なるものなのか。良い牙をお持ちです」(田部井) -
バブ(2歳)
「ひげ、顔、手、円弧だけで描けそうな造形が、とても和ませてくれます」(田部井)
バブ(2歳)
「ひげ、顔、手、円弧だけで描けそうな造形が、とても和ませてくれます」(田部井)
池田
僕は分ノ子がお気に入りです。ものすごくおどけた顔をしてる(笑)。一方で、神々しい姿も猫らしいので、「美」部門も立てましょう。

「猫様のいたずら心満載!ハロウィンのグッズにしたくなるような衝撃でした」(高城)
高城
「美」だと、左右の目の色が異なるペリタロウに惹かれます。写真もすごくきれいですよね。

「芸術!左右のお目目の色もそれぞれ綺麗で真っ白なボディが粉雪のよう」(高城)
美部門入賞
写真的な美しさと猫の凜々しい居住まいに着目
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あお(4歳)
「猫はどの角度から見ても美しいことをこの写真が改めて教えてくれました」(田部井)
あお(4歳)
「猫はどの角度から見ても美しいことをこの写真が改めて教えてくれました」(田部井) -
トロ(1歳)
「美部門の個人的イチオシ!の光と白、そして目」(池田)
トロ(1歳)
「美部門の個人的イチオシ!の光と白、そして目」(池田) -
こはく(11歳)
「この子と、こんなふうに不意に目が合う濃密な関係を、たまらなく感じます」(田部井)
こはく(11歳)
「この子と、こんなふうに不意に目が合う濃密な関係を、たまらなく感じます」(田部井)
田部井
猫たちの温もりや愛を感じる「ラブ」部門にも、思わず顔がほころぶ珠玉の4枚が集まりました。改めて、猫の一瞬を切り取るって奇跡的ですよね。
池田
うまく撮るコツみたいなのはないと思っていて、猫によって付き合い方や撮り方は変わるんですよね。だから、私たちは素晴らしい写真から撮影者と猫との素敵な関係性を覗き見させてもらったんだと思います。
田部井
猫には愛情表現の方法が数えきれないほどあります。飼い主の視点からその瞬間をうまく切り取った写真がたくさんありましたね。
高城
他人には簡単に見せない顔を、写真を通して私たちに見せてくれているんですよね。だから、まずは手を合わせてから、猫ちゃんの無防備な姿を見せてもらいました。選ぶのは心苦しかったんですけど、かわいい子をこんなにもたくさん見られて楽しかったです!
ラブ部門入賞
猫に秘められた愛くるしさがぎゅっと凝縮
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ネリ(7歳)/トビ(7歳)
「そのぬくもりに用がある!(byサンボマスター)」(池田)
ネリ(7歳)/トビ(7歳)
「そのぬくもりに用がある!(byサンボマスター)」(池田) -
ジュリエンヌ(19歳)/アンナ(18歳)
「LOVE♡ごろごろ音もきっとシンクロしているに違いない」(田部井)
ジュリエンヌ(19歳)/アンナ(18歳)
「LOVE♡ごろごろ音もきっとシンクロしているに違いない」(田部井) -
なつ(2ヵ月)
「泣けてくる……ぜ〜。たまらん」(池田)
なつ(2ヵ月)
「泣けてくる……ぜ〜。たまらん」(池田) -
雲丹(うに)(1歳)/水雲(もずく)(1歳)
「仲良しこよし。猫様同士の顔がビッタリとくっついて、王冠に見えたり!」(高城)
雲丹(うに)(1歳)/水雲(もずく)(1歳)
「仲良しこよし。猫様同士の顔がビッタリとくっついて、王冠に見えたり!」(高城)
審査員3名の感性を刺激した個人賞を発表
高城れに賞
飼い主だからこそ捉えられたお腹を見せた無防備な寝姿

気持ちよさそうな顔で、お腹をあらわにして寝転んでいる。猫の好きなポイントだらけです。
猫の魅力がすべて詰まっている写真だと思います。なぜか寝づらそうな場所で寝ようとするし、こうやってお腹を無防備に見せてくれているのも飼い主との信頼関係がある証拠ですよね。あとはこの顔(笑)。自分が飼っているスコティッシュフォールドも顔が丸くてくしゃっとしているのが愛らしくて、昭和の漫画に出てくる猫の絵みたいなんです。
大の字になって寝ることもあるんですけど、カメラを向けると本領発揮してくれない時があって、気づかれないように工夫して撮っています。態度はそっけないけど、実は寂しがり屋なのも猫のかわいさ。人も猫も見かけによらないということをたくさん学んでいます(笑)。生涯付き添うパートナーとして、私もたくさん写真に収めていきたいな。
池田晶紀賞
猫の“野性”に付き合っていると自分の中にある感覚も取り戻せる

すぐに落ちてしまうのでシャッターチャンスは意外と一瞬。うまく捉えた一枚だと思います。
ダダダと走ってきて、網戸に跳びついてぶら下がろうとする。大人の猫は重いからできないんだけど、ちっちゃい猫はこれをよくやるんですよね。でもこの一瞬を写真で捉えるのは案外難しい。外の景色を見ようとしているのかな。それともぶら下がりたいだけかな。
そうしたことを考えるだけでたまらないです。僕は以前に保護猫を飼っていましたが、それまで縁遠い存在だったので暮らしてみて衝撃が大きくて。猫と暮らすうえでは、思い通りにならないことをいかに楽しめるかが重要なのだと思いました。犬と散歩するのも似ているけど、自分の中にある“野性”を取り戻せる感覚があるんです。応募作の中にも、猫に対して敬意が感じられて、野性的な姿に心動かされる写真がたくさんありました。
田部井美奈賞
一枚の写真から猫と飼い主のキャラクターが見えてくる

顔の表情が飼っている猫とそっくりで、やっぱりどうしても親近感が湧きますね。
この子は自分が飼っている猫にも少し似ていて、選んでいる途中で思わず目が合ってしまいました。三角形に顔が収まっている、この構図が写真として面白いですよね。耳やおしりが隠れていたりして、全貌はわからないんですけど、なんとなくこの子のキャラクターも見えてくるような気がするんです。目を見る限り、少し興奮状態なんじゃないかな。
イタズラが好きでシーツの中に隠れて楽しんでいるような状況が見てとれて微笑ましいです。私が飼っている猫はこんなにもカメラ目線をしてくれないので、この飼い主さんは日頃から撮り慣れているんだろうなと思います。箱に収まって居心地よさそうにしているなど、機嫌がいい生き物がそばにいるのは幸せです。皆さんの写真にも癒やされました。