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BRUTUS 愛猫写真グランプリ!〜前編〜

BRUTUS.jpと、SNSでの募集に大量に集まった、愛の溢れる愛猫写真たち。脇田あすか、若木信吾、甲斐みのりら3人の猫好き審査員とともに、BRUTUSなりの視点でグランプリを開催。果たして審査員の心に刺さった写真たちとは?

photo: Natsumi Kakuto / text: Wakako Miyake

左から、アートディレクター・脇田あすか、写真家・若木信吾、文筆家・甲斐みのり
審査員を務めた3人。左から、脇田あすか(アートディレクター)、若木信吾(写真家、映画監督)、甲斐みのり(文筆家)

同居している家族にしか見せない姿も、猫フォトの醍醐味

若木信吾

たくさん集まりましたね。猫は飼い主にしか見せない姿があるので、それをうまく捉えている写真が多かったように思います。見ているだけで楽しいです。

甲斐みのり

確かに馴れている人だからこそ撮れる写真ってありますよね。私は「そうそう、猫ってこうだよね」という猫あるあると、「かわいい、グッズが欲しい」といったアイドルを愛(め)でる感覚。その2つの視点で選びました。

脇田あすか

実は私、猫は大好きで猫カフェに行ったり、友人の猫を触らせてもらったりはするのですが、くしゃみや鼻水が出ることがあって、ずっと猫アレルギーだと思っていたんです。ただ先日、検査をしたら猫ではなくハウスダストアレルギーだと判明。
それは、ここ最近のなかでとても嬉しかったことの一つでした。猫って犬とは違って、あまりワッと人間の方に来てくれるイメージがなく、そこが魅力。写真もそんなふうに感じるものに注目しました。

満場一致で金賞決定、表情やポーズも見事

若木

まず個別に気になる写真をセレクトしてみましたが、サンタ帽を被った碧夫は全員が選んでいますね。

脇田

実はもう1枚、被りものがあってそれと迷ったのですが、記憶に残るのは赤い帽子だと思って、こちらにしました。

甲斐

人間の方はかわいいからいろいろ着せるのだけど、猫の方は無。飼い主のあふれる愛と、だらんとしちゃっている猫の無の感じがたまらない。この写真にはそんな感情のズレが、おかしみとして出ている。そこがすごくいいと思いました。

若木

写真としての構図やバランスも整っていますね。ポストカードにしてもおかしくない。総合的な良さがあります。

脇田

あめとゆきも3人とも選びました。散歩中なようで、リードのようなものにつながれている。だけど、2匹ともまったく動く気配がないのが面白い(笑)。

若木

家の中での写真が多いなかで、外にいるのが新鮮だった。この体の丸さもいいですよね。

甲斐

気の合う猫ってずっとくっついている。2匹がリンクしている写真もけっこうありましたね。

脇田

全員が選んだのは、この2枚ですが、より印象的なのは赤の帽子が効いている碧夫でしょうか。

若木

どちらも光るものがありますが、今回の金賞は、ぱっと目を引いた碧夫にしましょうか。

甲斐

異論なしです。それでは銀賞はあめ、ゆきで決定ですね。

金賞

猫 碧夫(ぺきお)
碧夫(ぺきお)(9歳)
「ポストカードになってもおかしくないくらい、構図も定まっています」(若木)。「猫の楽しんでも嫌がってもいない無な感じが絶妙です」(甲斐)。「やらされている感にやられました」(脇田)

銀賞

猫 あめ、ゆき
あめ(5歳)、ゆき(5歳)
「うちにも2匹の兄妹猫がいますが、寒いときはこんなふうにくっついて寝ています」(若木)。「猫だけの世界観が伝わってくるところに魅力を感じます」(甲斐)。「お尻にもたれかかっているのが愛らしい。外で、というのもいい感じです」(脇田)

脇田

ノイも妙に気になります。

甲斐

美しい。気品があります。

若木

普段からこういう毛なわけではないよね。

甲斐

静電気かしら。

脇田

王者感がありますよね。ちょっと見下されている感じもします。

若木

インパクト強いですね。顔も若干、ドヤ顔をしている。

脇田

シンボリックなイメージ。この子、銅賞でしょうか。

甲斐

いいと思います。こういう瞬間って一緒に暮らしていないとなかなか見ることができない。それを見せてもらえるのもありがたいです。

銅賞

猫 ノイ
ノイ(10歳)
「こういうキャラクター、ハリウッド映画に出てきそうです」(若木)。「顔がキリッとしていて、毛並みも良く気品があります。でも、なんで毛が逆立っているのでしょうね」(甲斐)。「不思議な状態なのに落ち着いている。王者の風格」(脇田)

若木

寝ている姿も飼い主だからこそ撮れる写真ですよね。

甲斐

私も眠っているところをよく撮影していました。起こさないようそうっとカメラを取ってきてパシャッと。うまいへたというより、今、これを残したいという思いなんです。

若木

ムクはお腹を出して熟睡。安心しきっています。でもこれ以上、近づいたら起きてしまうという絶妙な距離感。意外とシャッターチャンスは難しいと思います。

甲斐

リリ、ルルのリンクしている寝姿もかわいいし、マロンは遊んでいる最中に寝落ちしてしまった感じ。どれも愛おしいです。

脇田

思わず笑ってしまったのがハナ。窓と畳の間にずり落ちてしまったよう。かわいい。

若木

落ちたのか上がってくるところなのかわからないけれど、猫って意外とドジだよね。これはアクション系。ずっと見ていないと撮れない写真です。

猫 ムク
ムク(5歳)
「安心していたり、暑かったりするとこの格好になります」(甲斐)。
猫 リリ、ルル
リリ、ルル(10歳)
「猫って目は開けているんだけど脳は寝ているときもあって、それもかわいいんです」(若木)。
猫 マロン
マロン(10歳)
「遊んだまま飽きちゃって寝てしまったのだと思います」(甲斐)
猫 ハナ
ハナ(3歳)
「ハナはもう1枚跳んでいる写真も。その続きで落ちちゃったのかな」(脇田)

甲斐

たぶん雨が降っている窓の外を見ている咘咘も好きな写真です。じっと何かを観察しているのも猫にはよくある姿。なんてことない日常なのだけど愛らしくてたまらない。そういう気持ちが伝わってきます。あと、コタロウにも惹かれました。猫好きってグッズも好きなんです。この写真は雑貨にできそう。ぜひTシャツを作ってほしい。買います。

猫 咘咘
咘咘(1歳)
「何かをじっと見つめている後ろ姿。これも猫にはよくある行動です」(甲斐)
猫 コタロウ
コタロウ(10歳)
「これはぜひ、このままグッズに。ポストカードにしてもいいと思います」(甲斐)

脇田

いかにも猫、というのがお皿を割ってしまったあおばや、ぽん太、けむしのように紙クズを散乱させている散らかし系。そっかーという気持ちになります。

甲斐

私も何枚もお皿を割られたし、散らかされるなど、事件の連続。でも、それはどうしようもない。猫と暮らすことは諦めることでもあります。事件を起こされたときは私も証拠写真を撮って自分の気持ちを納得させていたので、これらの写真はリアルだな、と思います。

猫 あおば
あおば(3歳)
「お皿は割るのが猫。怒ったところでどうしようもないので人間が諦めるしかない。でもちょっと悪いことしたな、と思っている顔をしています」(甲斐)。
猫 ぽん太
ぽん太(1歳)
「散らかし系ですね。リアルな雰囲気が伝わってきます」(脇田)。
猫 けむし
けむし(6歳)
「こちらも散らかしですが、ちゃんと構図を考えて撮っている気がします」(脇田)

写真に良し悪しはない、常にシャッターチャンス

脇田

跳躍の瞬間を捉えた保虎もけっこう好き。これもアクション系ですよね。きれいに撮れていて躍動感が伝わってきます。

甲斐

撮る方の俊敏性も大事。

若木

テヘランもいい瞬間を押さえています。ちょっと不思議なポーズ。

猫 保虎(ぽこ)
保虎(ぽこ)(8歳)
「跳んでいるところをきれいに撮れた写真。体の形もしなやかです」(脇田)
猫 テヘラン
テヘラン(5歳)
「壁を床のつもりで見ても変なポーズをしているみたいで写真として面白い」(若木)

甲斐

猫の写真を上手に撮るコツってあるんですか?

若木

自分で見返すためか人に見せるためか、目的によって変わると思います。あと写真って撮る方も見る方も、その時の精神状態が反映されるんです。今日の気分ではこれを選んだけど、明日は違うかもしれない。結局、正解とかうまいとかってないのかもしれません。

甲斐

確かに。どの写真もそれぞれ共感できて、甲乙つけ難かった。選ぶのは大変でしたが、満喫しました。

脇田

私も猫との暮らしって幸せなんだろうなと思えて楽しかったです。