改装しにくい集合住宅用に
「猫家具」を自らデザイン
高層マンションの一室で5匹のスコティッシュフォールドを飼う廣田敬一さん。猫たちに元気よく暮らしてもらうために、垂直移動できる空間を作りたかったが、マンションであるため大がかりな改装はしにくい。
市販のキャットタワーも探したが、自分も満足できる美しいデザインのものが見つからなかった。そこで猫と暮らすための家具を自らデザインすることに。
店舗の空間デザインなどを手がける廣田さんにとっては、家具デザインはお手のもの。猫が垂直移動するのに適した段差や、くぐり抜けるための穴の大きさ、傷つきにくい素材などを調べ、まずは棚を設計することに。
全高は居間の戸の高さに合わせ、色も床や壁の色にマッチするように白とダークブラウンのツートーンに。猫が隠れられるようフロントに幅42センチほどの板面を配し、これが補強の役割とデザイン的なアクセントにもなるようにし、出来上がったのが写真上の左の棚。
設置してみると猫は天板まで上ったり、途中の棚で休んだり、予想通りの動きをしてくれた。右下のスペースは本棚にも。次に同じ素材で水飲み場を兼ねたベンチも作ってみた。このベンチが廣田さんと猫たちの寛ぎの場所にもなっている。
猫の視線を考えて家を新築
人の住み心地も最高のものに
それでは一軒家ならばどうだろう。本能を色濃く残したこの奔放な動物にとって、決して大きくはない日本の住宅は、やはり窮屈な部分が多そうだ。家作りから猫の目線で工夫を凝らした住まいを見つけた。真に家族の一員となった猫たちが、家中のびのびと駆け回る。
ともに幼い頃から猫を飼っていたという鈴木健一さん、由花さん夫妻。結婚後、当然のように猫を飼いはじめたが、普通の住宅の建具や家具が人間の目線だけで出来上がっていることに、漠然と不満を抱いていたのだそう。
「かけがえのない家族の一員だから、このコたちの視点も取り入れた家が欲しいと思っていました」
だから、5年前に家を新築することになった時にまず希望したのは、リビングの吹き抜けに渡した梁を猫の散歩道にした「キャットウォーク」だった。
さらに壁には、ここへ上るためのステップを設置。1階から2階に至る、猫だけのための動線を確保したのだ。
また、リビングの掃き出し窓の外にウッドデッキをフェンスで囲った「ニャングルジム」があったり、壁に開いたキャットドアが猫用トイレにつながっていたりと、家の中にはほかにも猫専用の仕掛けがいっぱい。
7匹の猫たちが、ケンカもせず仲よく共存している。
もちろん人間の住み心地も抜群だ。吹き抜けのあるリビングは自然光に満ちた明るい空間だし、猫の爪痕がつきにくい無垢木のフローリングは、人間の足裏にだって心地よい。猫が喜ぶ家とは、人にも幸せな家なのかもしれない。