『Caravanserai』Santana(1972年)
サンタナが提示してくれた
夏のイメージ。
「Caravanserai」とは、ペルシャ語で隊商宿のこと。ラクダに荷を積んだ隊商が、陽炎に揺らめきながら砂漠を行くジャケット画は、まさにタイトルそのもので、メッチャ暑そう。今回夏というテーマですぐにあのジャケットが思い浮かびました。
最初期のメンバーが何人か残っているこのアルバムは、サンタナの中で僕が一番好きなレコードです。サンタナはもともとラテン・ロックのイメージでしたが、このアルバムにはジャズの要素が入っていたりブラジルの雰囲気もあったりして、その混ざり具合が、少し変わりつつあった僕の好みにぴったりでした。『Abraxas』も同じくらい好きですが、今回は砂漠の暑さという単純な理由でこちらを選びます。
実は、僕が一番知らない音楽がブラジルの音楽なんです。そもそも、なぜラテンの音楽に詳しくないかというと、僕がロンドンにいた子供の頃に聴いていたのは、ロックだったり、ソウルだったり、ブルーズだったり。ラテンは軟弱な感じがしたものです。まあ、人間誰でも、いつどこで育ったかという環境の影響は大きいですね。そのイメージが変わるきっかけはサンタナの音楽との出会い、特に映画『ウッドストック』でのライヴのシーンに圧倒されました。
『Caravanserai』は一種の組曲のような構成です。1曲目は、「Eternal Caravan Of Reincarnation」。虫の音から始まる環境音楽のような雰囲気の曲ですが、タイトルもかなりスゴイ。今回はどんな宇宙観を見せてくれるのかと、ドキドキしてしまうイントロダクションです。
当時のカルロス・サンタナは、インドの哲学に興味を持ち始めていた頃。インストの曲が多く「All The Love Of The Universe」は壮大な叙事詩のようで素晴らしい。もちろんサンタナ節も聴かせてくれます。
そして、今回オススメの一曲に選んだ「Stone Flower」。ジョビンの曲なのですが、当時の僕はそんなことを意識せず、あくまでサンタナの曲として聴いたものでした。今もブラジルの音楽を語れる人間ではありませんが、とにかく名曲、名演だと思います。
side B-2:「Stone Flower」
アントニオ・カルロス・ジョビンの曲です。僕はサンタナを聴くまでラテンの音楽をまともに聴いたことはなくて、特にブラジルの音楽については「イパネマの娘」程度のイメージでした。だからサンタナによってラテンの門戸が少しだけ開いたのかもしれない。サンタナというフィルターありきで。