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カンヌが認めた圧倒的な演技。最注目俳優、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズが説く演技論

カンヌ国際映画祭で主演男優賞に輝いた、映画『ニトラム/NITRAM』でのケイレブ・ランドリー・ジョーンズの演技がすさまじい。1996年、オーストラリア・タスマニア島で起きた無差別銃乱射事件に材を取る本作で、彼はやがて凶行に及ぶ青年ニトラムの、ある時は繊細で、ある時は残忍な内面を、複雑なまま、多面的に表現している。将来を最も嘱望される俳優の一人として、世界が熱い視線を注ぐ彼に聞いた、当代最高峰の演技とそのプロセスについて。

text: Yusuke Monma

──本作は実際の事件に基づく作品で、しかも事件はオーストラリア国内でいまだに物議を醸しています。そういった作品に出演することは、あなたのキャリアの中でも、特に不安や恐れの大きいものではありませんでしたか。

ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ いや、その心配はなかったかな。僕の唯一の懸念は、テキサス出身の僕がオーストラリア人青年をいかにリアリスティックに演じられるのかということ。

だから手始めに──少し馬鹿馬鹿しく聞こえるかもしれないけど──オーストラリアの映画をできるだけたくさん観たんだ。それはまだテキサスの両親の農場にいた時だから、本当に最初の段階の話だね。それからアクセントコーチについて、オーストラリアなまりを習得できるように口の動かし方からトレーニングした。

キャラクターについて考え始めたのがいつか、それを話すのはすごく難しい。というのは僕の場合、何かに取り憑かれた時にその仕事が始まるからなんだ。とにかく映画はたくさん観たし、オーストラリアのテレビや音楽も目いっぱい視聴した。

オーストラリアに着いてから2週間の隔離期間中、ジャスティン・カーゼル監督がキャラクターの準備をするためのリストをくれて、そこにテレビ番組や音楽が書かれていた。なかでもコメディを観るのはとても役に立ったと思うな。

その後、ほかの俳優たちと顔を合わせて、自分なりに考えたキャラクターを試した時に、このキャラクターの中心には疎外感があると学ぶことができた。それがわかったので、撮影が始まってからはその方向に自由に演技ができた気がする。ごめん、長くなっちゃったね(笑)。

──あなたの演技からはそのような疎外感や繊細さ、そしてまったく対照的とも言える暴力性や残忍さを感じました。演じるうえで、自分自身の過去のそういった記憶を参照している?

ジョーンズ キャラクターと自分自身は違うと思っているけど、これまでの作品を振り返ってみると、キャラクターの探しているものがある程度まで自分のなかにも見つけられるような気がするな。キャラクターを嫌うことも、キャラクターの行為を嫌うこともできる。

でももっともっと深い、原子的なレベルでお互いに出会える場所があるんじゃないかって。それは意識と無意識の狭間みたいなところで、うまく言葉にできないけど。僕の仕事はキャラクターとして自分を存在させること。あとは監督がそれをどう見せるか。監督って難しい仕事だね(笑)。

演技は……論理的じゃないね。

──この作品はニトラムを悪魔として描くのではなく、かといって肯定的に描くわけでもありません。作品がキャラクターをジャッジしていない点が素晴らしいと思いましたが、あなたはニトラムをどういったスタンスから理解しようとしましたか。

ジョーンズ ニトラムに対する見方は、観客と僕とでまったく違うだろうね。僕は観客と違って、ニトラムを彼の視点に立って見ている。同情という言い方はしたくないけど、ある点において彼が感じる痛みを同じように感じたり、知ったりしていくんだ。

そして撮影が終わるまでその状態でいて、終わってからもしばらくは自分を彼と同じ場所に置いておく。そうしないとリアルさに欠ける気がしてね。僕は役者として未熟だから、厳格なメソッドに従ってキャラクターに出入りする舞台俳優と違って、キャラクターと自分をうまく行き来できないんだ。

──あなたにとって演技は感覚的なもの?意外と論理的だったりする?

ジョーンズ まったく論理的じゃないね(笑)。一方で、演じていてキャラクターに支配されてくると、キャラクターの論理に従うようになる。撮影が進むにつれ、キャラクターとしてのセンスがどんどん強くなってくるんだ。

それがすぐ強くなる時もあれば、時間がかかる時もあるんだけど……ともあれ『ニトラム/NITRAM』は僕にとって特別な映画で、今までにない素晴らしい映画作りの経験をさせてもらったと思うよ。

怪演で強烈なインパクトを残してきた彼の3作。

『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011年)、『アンチヴァイラル』(12年)で脚光を浴びて以降数々の作品でインパクトを残してきたケイレブ・ランドリー・ジョーンズだが、ホームレスのエキセントリックな青年に扮した14年の①も鮮烈。

17年にはアカデミー脚本賞を受賞した②で、黒人青年を恐怖に陥れる白人至上主義者家族の一員を演じ、麻薬密輸で莫大な財産を得た男の実話を描く③(17年)では、主人公の無気力な義弟役を贅肉をだぶつかせながら怪演。いずれの作品でもとんでもない最期を迎えるのが彼らしい。

ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ
©Photo by Thomas Laisné/Contour by Getty Images