現代に復活を果たしたセイコー腕時計の王
〈セイコー〉の時計製作技術は戦後、2つの製造拠点が互いに切磋琢磨したことで、急速な発展を遂げた。1つは東京・亀戸の第二精工舎。同社が戦時中に長野・諏訪に疎開したことで、諏訪精工舎が新たに設立された。
第二精工舎は空襲でほぼ壊滅状態になったため、技術力で先行したのは諏訪精工舎だった。一方の第二精工舎も、工場再建後は負けじと開発を進めた。そして1960年、諏訪精工舎で「グランドセイコー」が誕生。その翌年に第二精工舎で産声を上げたのが、「キングセイコー」である。
フラットなダイヤルに、シャープでエッジの利いた針と、太く存在感が強いインデックスを配した初代「キングセイコー」のデザインは、当時としてはかなりモダンで、かつセイコー腕時計の“王”にふさわしい風格を兼ね備えていた。
1964年には「グランドセイコー」と並び、クロノメーター準拠の高精度を誇る第2世代が登場。その量産ムーブメントに秒針規正(停止)装置を追加した愛称「KSK」は、太く力強いラグと、よりシャープな造形のケース、12時インデックスに施した〈セイコー〉がライターカットと呼ぶ装飾など、上質な外装を兼ね備えていた。
その後も1968年に、毎秒10振動のハイビートムーブメントが搭載され、1972年には大胆にファセットカットしたケースにカラーダイヤルを組みわせた「VANAC」が登場するなど、「キングセイコー」は、機械と外装の両面で高級機としての進化を遂げていった。しかし70年代半ば、〈セイコー〉が完全にクォーツムーブメントに軸足を移したため、いったんその役割を終えることとなる。
しかし2000年、2021年に「キングセイコー」復刻限定モデルが登場。そして満を持して2022年、レギュラーモデルとして帰還を果たした。
【Signature:名作】SDKA005
「KSK」をなぞらえながら、より実用的にアップデート

2022年、「キングセイコー」復活に際し、外観の手本としたのは、1965年に誕生した「KSK」だった。さらに翌年リリースされた本作では、オリジナルにはなかったデイトが追加され、実用性を高めた。
12時インデックスのライターカットや太めのラグ、フラットなケースなどは1965年当時にかなり忠実で、レトロな印象である。薄型自動巻き搭載により、ケース厚は10.7mmに抑えられ、小径であることも相まって取り扱いやすい。やや角張った7連ブレスレットも、現代版からの仕様。これもまた、レトロな雰囲気だ。
径38.6mm。自動巻き。SSケース。418,000円
【New:新作】SDKV001
大胆なフォルムをまとう1970年代スタイルが再来

1970年代は、時計界においては実験的デザインの時代だった。「キングセイコー」も例外ではなく、前述した多面カットケース&カラーダイヤルの「VANAC」を生み出している。そのコンセプトが、現代に蘇った。
新生「VANAC」が表現しようと試みたのは、東京に広がる地平線をイメージした“Tokyo Horizon”である。金属の塊から削り出したかのようなケースのフォルムが実に力強く、ダイヤルは横縞の型打ちと色とで、地平線の上に広がる青空と太陽とを表現。レトロモダンなスポーツウォッチが、コレクションに加わった。
径41mm。自動巻き。SSケース。396,000円