スイス屈指の内製率を誇る、実力派・独立系時計メゾン
同じ固有振動数の2つの振り子を並べて吊るし、一方を振動させると、止まっていた他方も振動し始める。この物理的現象を、共振(仏語でレゾナンス)と呼ぶ。さらに固有振動が異なる振り子時計を同じ壁に設置すると、それぞれの振り子の振動が壁伝いで影響し合い、やがて同期することが17世紀に発見され、この現象も共振と呼ばれる。18世紀、この現象を応用した2つの振り子が備わる高精度クロックが登場。後にテンプでも同じ現象が起こると分かり、懐中時計でも試みられたが、成功例は極めて少ない。
〈アーミン・シュトローム〉は、2015年にレゾナンスを腕時計に応用し、一躍脚光を浴びた独立系時計メゾンである。元は1967年、ブランドと同名の時計師によって設立された工房。これを2006年に引き継いだ実業家サージュ・ミシェルと技術者クロード・グライスラーは、すぐに新ファクトリー建造に動き、2008年には時計製造に関するほぼすべてを自社で完結できる体制を確立。翌年には7日間駆動を実現した最初の自社製ムーブメントCal.ARM09が完成し、2010年に時計市場へ再デビューを果たした。
その後も2012年にトゥールビヨンを、19年にミニッツリピーターを実現するなど優れた開発力を発揮。ファクトリー完成からわずか14年で、実に18種類もの自社製ムーブメントを生み出してきた。その多くはスケルトナイザーでもあった創業者のDNAを受け継ぎ、オープンワークが施されている。そしてすべてのパーツには伝統的な装飾仕上げが行き渡り、審美性にも優れる。
手仕事の伝統を重んじる一方でデザインはモダンであり、レゾナンス機構をはじめ革新的でもある〈アーミン・シュトローム〉に、各国の時計愛好家たちが、熱視線を送り続ける
【Signature:名作】ミラード・フォース・レゾナンス
2つのテンプが完璧に同期し、高精度をかなえる

並列する2つのテンプに備わるヒゲゼンマイは、巻き方向がそれぞれ逆転している。そして各ヒゲゼンマイの外側終端を固定するヒゲ持ちを、ヘアピン状に3度折り曲げたクラッチ・スプリングで連結することで共振を促す仕組み。各テンプの振動は完璧に同期し、それに伴い2つのスモールセコンドの運針も同期する。
独創的なレゾナンス機構のほぼ全容を、オフセットダイヤルの周囲に露わにした。秒針の同期をより明確に視覚化するため、針を3スポークとしているのがユニーク。2時位置のボタンを押すと、各秒針がゼロリセットされる。限定50本。
径43mm。手巻き。SSケース。12,320,000円
【New:新作】ワンウィーク・スケルトン・チタニウム
軽快な着け心地で、1週間をともに過ごす

初の自社製ムーブメントCal.AMR09に始まった7日間駆動の最新機は、今まで以上に大胆にスケルトナイズされた。ダイヤル右半部に状を埋め尽くす2つの香箱も、ゼンマイの巻き上がり具合が目視できるまでに大きく開口。
9時位置のスモールセコンド内もオープンワークされ、ガンギ車が動く様子が確認できる。その上には、円錐形のパワーリザーブ計を装備する。ケースとブレスレットはチタン製。着け心地が実に軽やかである。限定100本。
径41mm。手巻き。チタンケース。7,480,000円
 
         
    




 
    