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ブルータス時計ブランド学 Vol.54〈コルム〉

海より深い、機械式腕時計の世界から、知っておきたい重要ブランドを1つずつ解説するこちらの連載。歴史や特徴を踏まえつつ、ブランドを象徴するような基本の「名作」と、この1年間に登場した注目の「新作」から1本ずつ、併せて紹介。毎回の講義で、時計がもっと分かる。ウォッチジャーナリスト・高木教雄が講師を担当。第54回は〈コルム〉。

text: Norio Takagi / illustration: Shinji Abe

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ユニークなスタイルを生み続ける独立系メゾン

1955年の創業から変わらぬ天空を指す鍵を象ったロゴは、時計界で新たな扉を開ける決意の表れである。実際に〈コルム〉は優れた創造性を発揮して、腕時計の新たなスタイルを構築し、またヒット作を幾つも作り上げてきた。

1960年には、角形時計でいち早く高い防水性能と自動巻きを実現。これは英国で開催されていたヨットレース「アドミラルズカップ」とのコラボから生まれたもの。また1964年には本物の20ドル金貨で極薄ムーブメントをサンドした「コインウォッチ」を生み出し、その2年後にはフラットで幅広のベゼルにインデックスを配するスタイルを他に先駆けて実現した。

またメカニズムにおいても1980年、独立時計師ヴィンセント・カラブレーゼによって、一直線状に全パーツを構築したスリムな手巻きムーブメントの製品化に成功。それを透明な縦長の角形ケースの中心線上に設置した「ゴールデンブリッジ」は、今もメゾンを象徴する傑作である。

そして1983年、前述した防水角形時計を再解釈した大ヒット作が誕生する。ケースはヨットで使われるナットを模した12角形とし、カラフルな国際海洋信号旗をインデックスに象った新生「アドミラルズカップ」である。PVDでオールブルーに染め上げ、ゴールドIPを差し色としたカラーリングも斬新で、海を愛する富裕層に歓迎された。

2000年に登場した、サファイアクリスタル風防をシャボン玉のような球体状とした「バブル」も、その大胆な見た目が時代性を捉え、世界的なヒットになった。近年はムーブメント開発にも積極的に取り組み、トゥールビヨンやミニッツリピーターを自社開発で製作。独立系メゾンとして〈コルム〉は、自分が信じる道を歩み、革新を続ける。

【Signature:名作】ゴールデンブリッジ クラシック

透明な空間にムーブメントが橋を架ける


ぽっかりとあいた透明な空間に、ゴールド製のスリムなムーブメントが上下に橋を架ける。1980年にカラブレーゼが考案した唯一無二のメカニズムとスタイルを、高級ムーブメント会社ヴォーシェ・マニュファクチュールとの協業で2005年に改良し、トノー形で再解釈した一本。

裏蓋側にあったリューズを6時位置に移して操作性と防水性を高め、機械自体の信頼性も高まった。極めて大胆な見た目であるが、外装と機械の上質な仕上げによってクラシカルな雰囲気を醸し出したのが、見事。時計史にその名を刻む名作である。

縦51×横34mm。手巻き。18KRGケース。7,700,000円。

【New:新作】アドミラル 42 オートマティック

モノクロームをまとった第2のアイコン

特徴的なケースのフォルムとインデックスにより、一目でそれと分かる。ブランド第2のアイコンとなるアドミラルの新装モデルだ。元来はカラフルな国際海洋信号旗をモチーフにしていたインデックスをシルバーに揃え、全体をグレーのトーン・オン・トーンで整え、静謐な印象に。一方でダイヤルはランダムな模様とし、豊かなニュアンスで個性を主張する。その素材は、メテオライト(隕石)。メテオライトダイヤルは他社にもあるが、1986年に時計界で初めて採用したのが〈コルム〉であった。メゾンの先進性を現代に伝える一本は、自社製ムーブメントCal.CO 395を搭載する。

径42mm。自動巻き。SSケース。1,760,000円。

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