創業100周年を機に、高級時計市場に参入
〈グッチ〉のアーカイブを遡ると、1960年代に作られたバッグの留め金に組み込んだ時計が見つかる。1970年代には、スイスに時計専門の工房を設立。イタリアのデザインと、スイスの時計製造技術を融合したウォッチコレクションは、長くファッション性が重視され、ムーブメントも取り扱いがしやすいクォーツが主に搭載されてきた。
ところがブランド創業100周年を迎えた2021年、〈グッチ〉ウォッチの方向性は大きく変わった。この年誕生した「グッチ 25H」は、幅広のフラットなベゼルを持つケースとブレスレットを統合。1970年代に確立されたラグジュアリースポーツウォッチのスタイルを再解釈した外装に、ブランド初の自社製ムーブメントを搭載した。しかもマイクロローター式の自動巻きとし、時計専業ブランドでも製作が難しい厚さわずか3.7mmという極薄をかなえてみせた。さらにトゥールビヨンも同時にリリースされ、そのムーブメントも4.75mm厚の極薄設計であった。
何の前触れもなく、唐突に発表された〈グッチ〉の自社製ムーブメントは、時計界に衝撃を与えた。そして、その優れた設計と完成度の高さは、称賛を持って迎えられた。「グッチ 25H」で高級時計市場に参入を果たした〈グッチ〉は、その後もさまざまな複雑機構を自社で実現。ダイヤル中央にトゥールビヨンを置き、その周囲に配した12個の貴石のビーズがボタン操作でクルクルと回転する、といったユニークな複雑機構も創り上げている。
2023年には、スイス時計産業の中心地の1つであるヌーシャテル州の町・コルタイヨに新たな製造拠点「グッチ ウォッチ ラボ」が完成。独創的な高級時計開発のスピードは、ますます加速していく。
【Signature:名作】グッチ 25H オートマティック スチール ウォッチ 40MM
初の自社製ムーブメント搭載機
2021年に登場し、〈グッチ〉ウォッチのカジュアルなイメージを覆した、マイルストーンである。極薄の自社製自動巻き搭載の恩恵でケースも7.1mm厚と薄いが、形状が異なる2層のベゼルを重ね、最上面はマットに仕上げ、下層部はポリッシュで煌めかせて、薄さの中に立体感と豊かなニュアンスを創出。ダイヤルには太く立体的な横ストライプを造作し、力強い印象を併せ持たせている。
スタイル的にはラグジュアリースポーツウォッチの定石に倣うが、それをシルバーのトーン・オン・トーンで、スタイリッシュに再解釈してみせた。ブレスレットの剛性は高く、かつしなやかでもあり装着感にも優れる。
径40mm、自動巻き、SSケース。1,408,000円。
【New:新作】グッチ 25H ミニッツリピーター
超複雑機構をポップに仕立てる遊び心
〈グッチ〉の高級時計製作はスタートからわずか3年で、トゥールビヨンとミニッツリピーターという2つの複雑機構の組み合わせを実現してみせた。しかもミニッツリピーターは、類例が数少ない、3つのゴングとハンマーが備わるカリヨンである。その操作を一般的なスライダーやプッシュボタンとはせず、ベゼルを回して行う仕組みとしたのは、極めて革新的。
時計専業ブランドでも製作が難しい複雑機構を、グラフィカルなスケルトン仕立てにした遊び心が〈グッチ〉らしい。ベゼルを回すとダイヤルで現在時刻を読み取り、その数だけハンマーを動かす機構が、ドラマティックな動きを披露する。
径40mm、手巻き、18KWGケース。価格要問い合わせ。