Wear

Wear

着る

ブルータス時計ブランド学 Vol.43〈カシオ〉

海より深い、機械式腕時計の世界から、知っておきたい重要ブランドを1つずつ解説するこちらの連載。歴史や特徴を踏まえつつ、ブランドを象徴するような基本の「名作」と、この1年間に登場した注目の「新作」から1本ずつ、併せて紹介。毎回の講義で、時計がもっと分かる。ウォッチジャーナリスト・高木教雄が講師を担当。第43回は〈カシオ〉。

text: Norio Takagi / illustration: Shinji Abe

連載一覧へ

エレクトロニクスで、腕時計を革新

正式な社名は〈カシオ計算機株式会社〉。電磁石式計算機を国内でいち早く完成させ、1957年にはリレーと呼ばれる継電器を用いた世界初の小型純電気式計算機「14-A」を生み出すなど、市場をリードしてきた。今も電卓は、同社にとって重要な商材だ。

そして1974年、電気計算機で培ったLSI技術を生かし、これまた世界初となるオートカレンダー搭載のデジタルウォッチ「カシオトロン」で時計市場に参入を果たした。当時、語られた「時計は、一秒一秒の足し算」とは、〈カシオ計算機〉ならではの名言である。

電子技術で腕時計を革新した〈カシオ〉から1983年、まさに時代を動かす革命児が誕生する。今も同社を象徴する「G-SHOCK」の初号機「DW-5000C」である。目指したのは、10mの高さから落としても壊れない前代未聞の耐衝撃性。社屋の3階から落下試験を繰り返した試作品の数は、およそ300個にも及んだ。

試行錯誤を繰り返す中、辿りついたのが、全面をウレタンでカバーし、内部では4段階で衝撃を吸収する耐衝撃構造と、電子モジュールを点で支えてケース内で宙に浮かす中空構造の組み合わせだった。

極めて優れた耐衝撃性に、最初に飛びついたのは、アメリカの警察官や消防士。1994年公開の映画『スピード』では、キアヌ・リーブス演じる主人公の警察官が身に着ける「G-SHOCK」が、度々スクリーンに大映しとなったことで、認知度は一気に高まった。

また1993年に登場したダイバーズウォッチ「フロッグマン」を皮切りに、女性向けの「ベビーG」、フルメタルの「MR-G」、フルメタルケースの電波ソーラー腕時計「オシアナス」など、コレクションを拡充。それぞれがファッション、カルチャーと結びつくことで「G-SHOCK」は、世界的な大ヒットを続ける。

【Signature:名作】GW-M5610U-1JF

時代を動かした初号機の姿を映す

GW-M5610U-1JF

初代「G-SHOCK」のフォルムとダイヤルデザインを現代に継承した〈カシオ〉ウォッチを象徴する一本。今では多くの高級時計ブランドがラインアップするブラックという表現を、1983年にいち早く導入していた点においても初号機「DW-5000C」は、エポックメイキングな存在であった。

外観こそレトロフューチャーだが、光充電システム「タフソーラー」や世界6カ所の標準電波を受信して自動で時刻を合わせる「マルチバンド6」といった機能が盛り込まれ、実用性を追求。

縦46.7 × 横43.2mm、クォーツ、樹脂ケース。22,000円。

【New:新作】GST-B600-1AJF

スーツにも似合うシリーズ最小デジアナ

CASIOのGST-B600-1AJF

2015年に誕生したSS製のラウンドケースを特徴とする「G-STEEL」コレクションからの最新作。ケース厚は11.4mm、径は42.3mmとシリーズ最薄・最小モデルであり、スーツにも合わせやすい。小さくなっても、耐衝撃構造や20気圧防水といったタフネスぶりは健在。

アナログとデジタルのハイブリットによる多機能も魅力だ。スマートフォンとBluetooth通信でつながるモバイルリンク機能も備わり、専用のアプリでスマホからさまざまな操作ができるのも、便利だ。

径42.3mm、クォーツ、SS+樹脂ケース。44,000円。

連載一覧へ