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ブルータス時計ブランド学 Vol.32〈モンブラン〉

海より深い、機械式腕時計の世界から、知っておきたい重要ブランドを1つずつ解説するこちらの連載。歴史や特徴を踏まえつつ、ブランドを象徴するような基本の「名作」と、この1年間に登場した注目の「新作」から1本ずつ、併せて紹介。毎回の講義で、時計がもっと分かる。ウォッチジャーナリスト・高木教雄が講師を担当。第32回は〈モンブラン〉。

text: Norio Takagi / illustration: Shinji Abe

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筆記具で培ったクラフツマンシップ

万年筆で名高い〈モンブラン〉は、3年以上の準備期間をかけて1997年、スイスのル・ロックルに時計専門会社〈モンブラン モントレ S.A.〉設立し、時計市場に参入を果たした。同じ年に発表された初のウォッチコレクションの名は、「スター」と「マイスターシュテュック」。ブランドを象徴するエンブレムに由来する名と、代表的な筆記具コレクションと同じ名を冠し、ペン製作で培ったクラフツマンシップを注ぎ込んだ高級感あふれる外観でまず注目を集めた。

その後もウォッチコレクションを拡充しながら、ムーブメント開発にも着手。そして2008年、初の自社製ムーブメントをクロノグラフで実現したことで、時計ブランドとしての地位を確立することとなった。

また〈モンブラン〉を傘下に置く〈リシュモン グループ〉は、クロノグラフの名機をいくつも持ちながら休眠状態にあった、1858年創業の老舗時計メゾン〈ミネルバ〉を2006年に買収していた。その翌年に現代に蘇らせた〈ミネルバ〉製ムーブメント搭載モデルが〈モンブラン〉から登場したことは、時計関係者を少なからず驚かせた。復活したムーブメントはいずれも手巻きで、シンプルな3針が2つ、クロノグラフが2つ。いずれもすべてのパーツに入念な手仕上げが行き渡る高級機である。

これら4作は、名門〈ミネルバ〉復活の打ち上げ花火だと思われていたが、〈モンブラン〉では2011年以降、〈ミネルバ〉製ムーブメント搭載モデルは恒例となった。そして同社の工房は〈モンブラン ヴィルレ〉の名で〈モンブラン〉傘下へと改組。ル・ロックルとヴィルレ、2つの製造拠点を得た〈モンブラン〉は、ミドルレンジから完全ハンドメイドのハイエンドまで、実に多彩なモデルを展開するに至った。

【Signature:名作】モンブラン スター レガシー オートマティック デイト 39MM

ダイヤルを華やぐホワイトスター

〈モンブラン〉モンブラン スター レガシー オートマティック デイト 39MM

〈モンブラン〉初のウォッチコレクションの一つ「スター」の名を継ぎ、2018年にスタイルを再構築。海岸の小石のように丸みを帯びたケースのフォルムやオニオン型のリューズは、〈ミネルバ〉が19世紀後期から20世紀初頭にかけて製作していた懐中時計をモチーフとする。

柔らかな筆致のブレゲスタイルのアラビア数字とその外側に配したレイルウェイも、懐中時計からの引用。一方でラグに段差を与えて立体的に設えるなど、現代的な味付けも忘れてはいない。ブランドのアイコンであるエンブレムから広がるギョーシェ装飾が華やか。リーフ型の時分針は、それぞれを形作るカーブや太さが綿密に計算され、針先の造形にまで気配りが利いている。

径39mm。自動巻き。SSケース。364,100円。

〈モンブラン〉モンブラン スター レガシー オートマティック デイト 39MM
秒針のカウンターウエイトもエンブレムに。インデックスは転写を重ねた立体感で上質な印象をより高めた。

【New:新作】モンブラン 1858 アイスシー オートマティック デイト

タフな防水性能で、氷の湖に挑む

〈モンブラン〉1858 アイスシー オートマティック デイト

2023年に誕生したダイバーズウォッチコレクションの新色は、グリーンダイヤルとブラックベゼルの組み合わせ。氷河の下にある氷の湖にダイブをコンセプトとし、特殊な木のヘラで金属盤をこすって仕上げる古い技法「グラテ・ボワジ」で、ダイヤルの表面に氷河のような質感を表現した。

針とインデックスのデザインは、〈ミネルバ〉がかつて製作していたミリタリーウォッチからの引用である。ブラックの逆回転防止ベゼルはセラミック製で防水性能は300m。ストラップは工具なしで交換でき、SSブレスレットが付属する。ブティック限定販売。

径41mm。自動巻き。SSケース。534,600円。

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