スイス時計産業の危機を救ったポップなクォーツ時計
1969年にセイコーが生み出した、大量生産が容易で高精度な腕時計用クォーツムーブメントは、たちまち世界の市場を席巻し、スイス時計産業は冬の時代を迎えた。これを「クォーツショック」という。〈スウォッチ〉は、衰退の一途を辿るスイス時計の現状を打破するべく、1983年に誕生した。
目指したのは、これまでになかったコンセプトの腕時計開発。樹脂製のケース内部に直接クォーツムーブメントを組み込み、フルオートメーションで生産するというまったく新しいスキームを構築した。こうして生まれたチープなプラスチック製腕時計の登場を当初、時計関係者はいぶかった。
しかし春夏・秋冬の各シーズンに大量の新作を投入し、販売期間は1シーズンというファッション業界にならった販売スタイルを採り、イタリアの著名なインダストリアルデザイナーと手を組んだポップな外観で人気を獲得。キース・ヘリング、横尾忠則といったアーティストや映画、音楽とのコラボ限定モデルの登場が人気に拍車をかけ、1990年代にはコレクターズアイテムとなるほどの大ブームを巻き起こした。〈スウォッチ〉は、腕時計をポップカルチャーにしたのだ。
また機械的にも、クロノグラフや自動巻き搭載モデルを登場させるなど、ラインアップも拡充させていく。そして2013年、〈スウォッチ〉はわずか51のパーツから成る90時間駆動の自動巻きを、クォーツと同じくフルオートメーションで製品にまで作り上げる「SYSTEM 51」を実用化し、機械式腕時計にも革命を起こした。また素材でも2021年に原料の3分の1をバイオ由来樹脂とした「バイオセラミック」を開発するなど革新性を発揮している。
創業時に掲げた、これまでになかったコンセプトの腕時計開発、という目標は今も継続して、〈スウォッチ〉は時計界の新たな扉を開き続ける。
【Signature:名作】クリアリー ニュー ジェント
名作ジェリーフィッシュが、現代に再来!
内部のムーブメントを完全に透かし見せる透明なケース・ダイヤルと、赤・青・黄に色分けした針との組み合わせは、1985年に誕生し、〈スウォッチ〉がブレークするきっかけとなった「ジェリーフィッシュ」の、まさに再来である。
シルバーのインデックスリングも、オリジナルそのまま。しかし完全復刻とはせず、ケースを現代的な41mmに大型化し、時分針の色を逆にしている。ポップで清涼感タップリな外観は、これからの季節にぴったり。ケースは、2020年から用いている、土に還るバイオ系プラスチック製。地球環境にも、優しい。
径41mm。クォーツ。プラスチックケース。12,980円。
【New:新作】ビッグ ボールド アイロニー
SSとバイオセラミックの、幸福なマリアージュ
47mmのオーバーサイズケースが、強烈な存在感を放つ「ビッグ ボールド」コレクションからの最新作。アイロニーとの名の通り、ケースはSS製だが、内部には〈スウォッチ〉独自のバイオセラミック製のコアが組み合わされている。
メカを見せる透明ダイヤルは、〈スウォッチ〉ではお馴染みのスタイル。大型ケースと相まって、一層個性的な装いである。かなりの大振りではあるが、総重量はわずか108g。着け心地は軽快である。
径47mm。クォーツ。SS+バイオセラミックケース。26,070円。