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ブルータス時計ブランド学 Vol.25〈タグ・ホイヤー〉

海より深い、機械式腕時計の世界から、知っておきたい重要ブランドを1つずつ解説するこちらの連載。歴史や特徴を踏まえつつ、ブランドを象徴するような基本の「名作」と、この1年間に登場した注目の「新作」から1本ずつ、併せて紹介。毎回の講義で、時計がもっと分かる。ウォッチジャーナリスト・高木教雄が講師を担当。第25回は、モータースポーツと伴走し続ける〈タグ・ホイヤー〉。

text: Norio Takagi / illustration: Shinji Abe

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モータースポーツシーンで、クロノグラフ技術を研鑽

栴檀は若葉より芳し──創業者エドワード・ホイヤーが、自身の工房を開いたのは弱冠20歳の時だった。その8年後には、リューズ巻き機構で特許を取得。そして1887年には現在も多用されるクロノグラフの作動を高速化するスイングピニオンを開発し、以降、精密計時技術を研鑽していくこととなる。例えば1916年に実現された世界で初めて1/100秒の計測を可能としたストップウォッチがその一つ。その技術力が認められ、1920年のアントワープ大会から3度連続してオリンピックの公式計時を担当してきた。

そして1958年に4代目ジャック・ホイヤーが経営に参画したことで、現在に続くブランド方向性が決定づけられた。彼は、既存モデルの販売をすべて打ち切り、レースやラリー用のクロノグラフやストップウォッチ、ダッシュボード計時装置に特化させるという大胆な方向性を打ち出したのだ。そして1962年に「オータヴィア」、その翌年には「カレラ」といった、レーシングクロノグラフの傑作を世に送り出していった。特に「カレラ」は、多くのF1レーサーから愛され、当時の社名である〈ホイヤー〉の名は、モータースポーツとともに語られるようになる。また1969年には、ブライトリング、ハミルトン・ビューレン、デュボア・デプラと協業で、自動巻きクロノグラフの始祖の一つ「クロノマチック」を開発。それを初搭載した角型クロノグラフ「ホイヤー モナコ」をスティーブ・マックイーンが身に着け、映画『栄光のル・マン』に出演したことで、同モデルと〈ホイヤー〉は一気に知名度を上げた。

しかし1970年代にスイス時計産業を襲ったクォーツショックにより、経営が悪化。それを救ったのが、F1マクラーレンチームのオーナーだったタグ・グループであった。1985年に〈ホイヤー〉は、グループ傘下となり〈タグ・ホイヤー〉の名で再スタートを切った。この年、現在にメゾン初のダイバーズウォッチが誕生。1992年からは、世界的に盛り上がりを見せていたF1レースの公式タイムキーパーとなり、さらに知名度を高めていった。

そして2010年、積年の願いであった自社製クロノグラフムーブメントの開発に成功。その後〈タグ・ホイヤー〉は、複雑機構のトゥールビヨンを自社で実現するなど、ムーブメント開発においても優れた技術力を発揮していく。そして信頼性の高い汎用ムーブメントも並行して用いながら、多彩で幅広い価格レンジのクロノグラフとダイバーズウォッチを展開。スポーツウォッチブランドとしての確固たる地位を築き上げている。

【Signature:名作】タグ・ホイヤー モナコ クロノグラフ

マックイーンが愛した、伝説の角型クロノグラフ

タグ・ホイヤー モナコ

1969年、自動巻きクロノグラフと高防水角型ケースを先駆け、時計史に燦然と輝く名前を刻んだ「モナコ」の最新作。初代から受け継ぐブルーのダイヤルが、大胆にスケルトナイズされた。

デイトディスクも数字だけを残してギリギリまで肉抜きされ、6時位置の白いプレートの上で数字がクッキリと姿を現し、日付を示す仕組みとした。初代と同じサイズ・形状の角型ケースは、極めて軽量なチタン製。約80時間駆動の自社製クロノグラフCal.ホイヤー02を搭載し、機械的な魅力も高い。

径39mm。自動巻き。チタンケース。1,347,500円。

【New:新作】タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ

還暦を迎えた丸型レーシングクロノグラフのアイコン

タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ

1963年に誕生した「カレラ」は、「モナコ」と双璧を成すメゾンのアイコン。これはその最新作で、ダイヤルを覆うサファイアクリスタルをドーム状に設え、ケース外周ギリギリまで拡張し、またダイヤル外周のインナーベゼルやスロープにも丸みを持たせ、どの角度からも見やすく整え直された。

ケースも人間工学的に手直しされ装着感を向上させている。同時に両サイドをファセットカットしたロングホーンのラグや針・インデックスのデザインは、初代の名残が強く、クラシカルな印象も併せ持つ。

径39mm。自動巻き。SSケース。808,500円。

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