自社一貫製造で数々の技術革新を実現
〈シチズン〉との名は、前身である尚工舎が1924年に生み出した最初の懐中時計に冠されたモデル名であった。広く市民に愛される時計との思いを込めた名付け親は、当時の東京市長だった後藤新平伯爵。そして1930年、尚工舎を母体とした〈シチズン時計〉創立へと至る。
1931年には〈シチズン〉初の腕時計が完成。大戦の傷が癒えた1956年には、国産初の耐震装置付き腕時計「パラショック」を世に送り出した。以降、国産初の完全防水腕時計「パラウォーター」(1959年)、世界最薄の紳士用自動巻き腕時計「シチズンダイヤモンドフレーク」(1962年)など、数々の偉業を打ち立ててゆく。また1970年には、世界に先駆けチタン製ケースも実現してみせた。そして1973年に自社製初のクォーツ式腕時計を発表して以降は、電気式腕時計に軸足を移す。
この分野においても1975年に年差(1年の誤差)±3秒という当時の最高精度を実現し、1978年には1mmを切る世界最薄ムーブメントを生み出すなど優れた技術力を発揮していく。電波時計技術にも1989年からいち早く取り組み、2011年には世界で初めて人工衛星からの電波を受信し時刻を自動修正する「エコ・ドライブ サテライト ウェーブ」を完成させた。これは今あるGPSウォッチの先駆けである。半導体や電子部品をグループ企業で自社製造できる〈シチズン〉だからこその、革新性である。
こうした技術開発と並行し、海外への資本投資も積極的に推進してきた。2008年、過去に提携関係にあったアメリカの時計ブランド〈ブローバ〉を買収。さらに2012年には、高級ムーブメント会社〈ラ・ジュー・ペレ〉と高級時計ブランド〈アーノルド&サン〉、〈アンジェラス〉を傘下に置くプロサーホールディングスを、2016年には高性能な自社製機械式ムーブメントを有するフレデリック・コンスタントを買収し、スイス時計業界に大きな衝撃を与えた。
これら買収劇の中でも、〈ラ・ジュー・ペレ〉を傘下に置いたことが、その後の〈シチズン〉の方向性を大きく動かすこととなる。機械式ムーブメント開発への情熱に、再び火が灯ったのだ。そして2021年、実に11年ぶりとなる新機械式ムーブメントCal.0200が完成。これは高精度にして審美性にも優れた高級ムーブメントであり、〈シチズン〉の機械式の歴史に新たな扉を開いた。
また外装でも、ステンレススティールやチタンの表面を硬化処理する独自のデュラテクト技術を確立。傷が付きづらい〈シチズン〉の腕時計は美しさを保ち、末永く市民に愛され続ける。
【Signature: 名作】ザ・シチズン NC0200-90E
新時代を開く高級機械式腕時計
前述した新機械式ムーブメントCal.0200を搭載したファーストモデルの一つ。潔い多面構成のケースとブレスレットとを完全統合させた外装は、ヘアラインとポリッシュに仕上げ分けられ、造形美がより際立つ。
Cal.0200は、ゼンマイが収まる香箱とつながる二番(歯)車が分針を、三番車を介した四番車が秒針を、それぞれ直接駆動する設計。機械式ムーブメントとして最もシンプルな構造であり、それゆえ故障が少なく高精度が得やすい。またパーツ製造の一部を〈ラ・ジュー・ペレ〉が担い、高級機にふさわしい審美性も兼ね備わる。特定店限定販売。
径40mm。自動巻き。SSケース。605,000円。
【New: 新作】アテッサ CC4055-65E
世界中どこにいても、時間・日付を自動修正
GPS衛星から位置・時刻情報を取得し、世界中どこにいても時刻・カレンダーを自動修正してくれる「サテライト ウエーブ GPS」搭載の最新作。ベゼルはサファイアクリスタル製とし、オールブラックの外装はチタンにデュラテクトDLCが施され、優れた耐傷性を得ている。同じく黒いダイヤルは、異なる質感や色味を組み合わせ、豊かな表情を創出した。
6時位置に第2時間帯表示を装備。リューズ操作で秒針をベゼルに刻んだ都市名に合わせると、即座に同地の時刻と日付に切り替わるなど、優れた操作性も魅力だ。
径44.6mm。クォーツ。チタンケース。286,000円。