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ブルータス時計ブランド学 Vol.6 〈オーデマ ピゲ〉

海より深い、機械式腕時計の世界から、知っておきたい重要ブランドを1つずつ解説するこちらの連載。歴史や特徴を踏まえつつ、ブランドを象徴するような基本の「名作」と、2022年に登場した注目の「新作」から1本ずつ、併せて紹介。毎回の講義で、時計がもっと分かる。ウォッチジャーナリスト・高木教雄が講師を担当。第6回は、名作ロイヤル オークを擁する、オーデマ ピゲ。

text: Norio Takagi / illustration: Shinji Abe

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あの名作誕生から、半世紀

ゴングの音色で現在時刻を知らせる「リピーター」、2つの経過時間が計測できる「スプリットセコンドクロノグラフ」、閏年の2月29日も正確に表示してくれる「パーペチュアル(永久)カレンダー」──〈オーデマ ピゲ〉は、これら3つの複雑機構を1つに統合した「グランド コンプリカシオン」(グランド コンプリケーション)を1世紀以上にわたって作り続けている唯一の時計メゾンである。

さらに言えば、今日まで途切れることなく創業者の一族による家族経営を堅持する高級時計ブランドは、〈オーデマ ピゲ〉だけ。ゆえに自らが信じる時計製作に向き合ってこれた。それを象徴する1つが、1972年に誕生し2022年に50周年を迎えた「ロイヤル オーク」だ。

SS(ステンレススティール)製の八角形のケースとブレスレットを完全統合した外装をサテンとポリッシュに仕上げ分け、超薄型自動巻きキャリバーを搭載。高級時計=ゴールド製が当たり前だった時代に、SSウォッチをエレガントかつ上質に仕立て、今日に至る“ラグジュアリースポーツウォッチ”という新ジャンルを確立した大傑作である。また1986年には、それまで懐中時計にしかなかったトゥールビヨンを自動巻き化して初めて腕時計に搭載し、量産してもいる。

デザインと機構が革新性に富む一方、伝統も重んじ、ムーブメントには切削加工と磨き仕上げができる金属のみを使用。すべてのパーツは手作業で、装飾仕上げを施している。自社製品の機械式時計は、いつの時代の時計であっても修理を約束。19世紀当時の工作機械を整備し、当時と同じ技術でのパーツの再現を可能とする。

これらの古い機械とそれを操る技術は、創業の地であり、今も本社を置くジュウ渓谷における時計製作の歴史の守り主として、この地で作られたすべての懐中時計に注がれている。〈オーデマ ピゲ〉のアトリエには、ジュウ渓谷の伝統のすべてがある。

【Signature: 名作】ロイヤル オーク オートマティック “50周年記念”モデル

半世紀を経ても色褪せない元祖ラグジュアリースポーツウォッチ

前述したラグジュアリースポーツウォッチの始祖が、誕生50周年を機にフルリニューアルを果たした。センターセコンドを有する37mmケースには、約60時間駆動の自社製自動巻きCal.5900を搭載。ビス留めした幅広の八角形ベゼルやケースと完全統合したブレスレットなど、特徴的な外観を初代から継承する。

四角錐の上部を切り取った形状が居並ぶグランドタペストリー装飾のダイヤルは、PVD(金属の物理蒸着)で初代と同じカラー「ナイトブルー、クラウド50」を再現した。そのダイヤルの凹部のライン内も微細なタペストリーが居並ぶ。外装の製作には手間がかかり、生産数は限られ、入手は極めて困難。

径37mm。自動巻き。SSケース。3,025,000円。

ケースとブレスレットは、繊細なサテンとポリッシュとに手作業で仕上げ分けられ、ニュアンスが実に豊かだ。

【New: 新作】CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ パーペチュアルカレンダー

再び高級時計の新スタイルを築いた21世紀の新アイコン

ブルータス時計ブランド学 Vol.6 オーデマ・ピゲ

ロイヤル オークと双璧を成す21世紀の新アイコンとすべく、2019年に誕生したコレクションの最新作。満天の星にも似たブルーアヴェンチュリンガラス製ダイヤルに永久カレンダーを潜めた。ダイヤル外周には、週数表示も装備する。正面から見ると丸いケースは、傾けると八角形のミドルケースが表れる。

針とベゼルがスリムでエレガントであるのに対し、ラグは大きくスポーティ。さまざまに印象が異なる要素を積層することで、スポーツやドレスといった既存のカテゴリーに収まらない、新たな高級時計のスタイルを提示した。コレクション名にある数字は、1日の最後の時間。新しい時代の幕開けを示唆する。

径41mm。自動巻き。18KWGケース。11,825,000円。

ブルータス時計ブランド学 Vol.6 オーデマ ピゲ
傾けると、八角形のミドルケースを丸いベゼルと裏蓋でサンドしていることが分かる。大型のラグは、スケルトナイズして軽快な印象を併せ持たせた。

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