〈A. ランゲ&ゾーネ〉とは
ムーブメントパーツの大半を大きな4分の3プレートで覆いつくす。時をカウントするテンプを支えるブリッジにはハンドエングレービングを施し、歯車の軸受けとなる人工ルビーはあらかじめゴールドシャトン(18金製のリング)にはめ込みビスで固定する。〈A.ランゲ&ゾーネ〉の、ほぼすべてのムーブメントに共通するこれらの特徴は、旧ザクセン公国の宮廷時計師の下で腕を磨いた創業者、フェルディナント・アドルフ・ランゲの時計製作技術からの継承である。彼は1845年、かつて銀山として栄えながら資源の枯渇により困窮していたエルツ山地の町に自身の工房を開き、時計産業を興すことで経済的発展をもたらした偉人。息子と孫も才気に恵まれ、〈A.ランゲ&ゾーネ〉の時計は世界的に高く評価されてきた。その工房に1948年、時代の陰が落ちる。東西冷戦である。エルツ山地は旧東ドイツに位置していたため、工房が国営化されてしまったのだ。4代目ウォルター・ランゲは、西側に脱出。雌伏の時を、長く重ねることとなる。
そして1989年11月10日ベルリンの壁が崩壊し、時代が動いた。その翌年に東西統一が果たされると、ウォルターは故郷に戻り会社を再興。1994年に新生ランゲによる4つのファーストモデルを発表する。そのいずれもがスイスの名門メゾンを凌駕するほどの入念な手仕上げが行き届く美しさと正確さとを兼ね備え、世界中のコレクターに大歓迎された。見事な復活劇を飾った〈A.ランゲ&ゾーネ〉は、シリーズごとに専用ムーブメントを与え、独創的な機構の数々を生み出して高級時計市場に確固たる地位を築き上げていく。すべてのムーブメントを組み立てた後、完全に分解して組み立て直し、再現性を確認する二度組みを行う稀有な存在。最高品質のために手間を惜しまないのが、ドイツの時計マイスターの矜持だ。
【Signature: 名作】ランゲ1
ブランドの復活劇を象徴する、斬新なアシメトリーデザイン
新生ランゲのファーストモデルの一つであり、アシメトリーなダイヤルデザインは発表時に時計界に大きな衝撃を与えた。一見奇抜なデザインは、実はすべての表示が重ならず個々の視認性を高める機能美。日付の各桁を個別の窓で表示するアウトサイズデイトも見やすさへの配慮から生まれ、特許を取得している。
2015年のフルリニューアルでは外観はほぼ変えず、機械だけをアップデートした。その手巻きムーブメントCal.L121.1は、パワーリザーブ計が残量0を示すと、秒針が正確に0位置で止まるなど精巧な独自機構が備わる。
径38.5mm。手巻き。18KPGケース。4,829,000円。
【New: 新作】オデュッセウス
ランゲの新時代を開く、ラグジュアリー・スポーティウォッチ
2019年に誕生したブランド初のSS(ステンレス・スティール)ウォッチにして初のスポーティウォッチに、今年やはり初となるチタンモデルが数量限定で追加された。わずかに青みを帯びるチタンの色味に合わせ、ダイヤルもほのかにグレーがかった専用のアイスブルーを採用。大きく見やすい9時位置の曜日表示と3時位置のアウトサイズデイトは、リューズ上下に備わるボタンで調整する仕組みとした。
針と植字インデックスには、畜光塗料スーパールミノバを塗布。ケースと一体化するブレスレットは、付けたままでも、バックル中央のボタンで長さ調整ができる。
世界限定250本。径40.5mm。自動巻き。チタンケース。ブティック限定。価格は要問合せ。