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ブルータス時計ブランド学 Vol.1 〈パテック フィリップ〉

海より深い、機械式腕時計の世界。中でも知っておきたい重要ブランドを、1つずつ解説する連載がスタートします。その歴史や特徴を踏まえつつ、ブランドを象徴するような基本の「名作」と、今年登場した注目の「新作」から1本ずつ、併せて紹介。毎回の講義で、時計がもっと分かる。担当講師はウォッチジャーナリスト・高木教雄が務めます。第1回は、押しも押されもせぬ名門、〈パテック フィリップ〉から。

text: Norio Takagi / illustration: Shinji Abe

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〈パテック フィリップ〉とは

世界最高水準の品質保証基準を満たす──〈パテック フィリップ〉は自らに高いハードルを課し、180年以上にわたって真摯に時計製作に向き合ってきた。実際にジュネーブ郊外にある工房を訪ねると、仕上げ部門で働く人の多さに驚く。彼らは時に顕微鏡を覗きながら、直径数ミリのギアの歯と歯の間まで手磨きをしている。こうしてすべてのパーツが完璧に磨き上げられたムーブメントは、摩擦が少なく滑らかに動いて摩耗を軽減し、100年以上先まで受け継ぐことを可能とする。むろん入念な手仕上げは外装にも及び、1ミリにも満たない植字のドットインデックスも、煌めく鏡面に磨き上げられている。

伝統的な手仕事を継承すると同時に、ムーブメントのキーパーツ素材に金属よりもはるかに精密な成形ができ、磁気にも強いシリコン(ケイ素)をいち早く導入。近年では、ボールベアリングやメッキを積層する超精密成形法LIGAプロセスといった先端技術にも積極的に取り組んでいる。これもまた、メンテナンス性や長期にわたる耐摩耗性の向上を目的とする。そして本社には19世紀手動工作機械が現役で活躍し、当時と同じ技法で修復を行っている。自社の時計はいつの時代のものであっても、完璧に修理できることがパテック フィリップの矜持。精巧で美しく、壊れにくい最高品質の腕時計は、完璧なアフターケアが保証され、世代を超えて受け継いでいける。

【Signature/名作】カラトラバ6119

文字通り世界最高峰の名をほしいままにする、名門のスタンダード

パテック フィリップの名作 〈カラトラバ6119〉

カラトラバは、シンプルな機構を持つラウンドウォッチのコレクション。この「6119」は、2021年に誕生した新定番である。柔らかなカーブでラグが一体化するケースとファセットカットした植字のバーインデックスは、1932年に生まれたRef.96からの継承。

〈パテック フィリップ〉は、ケースとラグの関係性をいち早く考察した時計ブランドでもあった。そしてベゼルの装飾は、1934年誕生のRef.96Dから受け継ぐ。カラトラバの歴史が交錯したケースに、このモデルとともに完成した最新の手巻きムーブメントCal.30‑255 PSを搭載する。

径39mm。手巻き。18KRGケース。3,894,000円。


【New/新作】年次カレンダー・トラベルタイム 5326

名門に新しい境地を開いた、2022年のNEWアイテム

パテック フィリップの新作 〈年次カレンダー・トラベルタイム 5326〉

年に1度、3月1日以外は調整が不要な特許取得の年次カレンダーと、2つの時針が異なる時刻を示すトラベルタイムが、初めて統合を果たした。ソリッドな時針側を1時間刻みで前後にリューズで動かし、渡航先の時刻に合わせられる仕組み。その際すべての暦が連動して現地時間に合う極めて精巧な設計を持つ。

スケルトンの時針はホームタイム(日本時間)を示し、帰国後にソリッド側を重ねれば、各暦も日本に合う。最新の機能を収めた外装は、ダイヤルもケースも今までになかった仕上げと装飾が導入され、メゾンの新境地を開いた。

径41mm。自動巻き。18KWGケース。9,713,000円。

※掲載商品は現在、いずれも人気で入手困難。購入は正規販売店に相談を。

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