ピピロッティ・リストの回顧展が、京都で開催。
スイスを拠点に国際的に活躍するピピロッティ・リストの回顧展が京都国立近代美術館で幕を開けた。リストは1980年代から注目を集め、97年のヴェネチア・ビエンナーレで世界的な評価を受けて以降、ジェンダーや身体、環境問題など現代社会に通底するテーマを扱ってきた。その抒情詩的な世界に誘う本展のタイトルは『あなたの眼はわたしの島』。
その意味は、「私たちの存在は、他者の視線があってこそ。他者の眼は島々のように点在し、注目や同情の眼差しを向けられて、ブラックホールのような社会から救われることもある。また、個々人に内在する世界を、外の集団的な世界と、いかにして繋げるかを提起しています」
日本での13年ぶりの個展となる本展は、約40の作品で構成。初期作から代表作、自然と人間との共生をのびやかに謳う近年の大規模なプロジェクション、映像と家具が溶け合うリビングルーム、リサイクル品を活用した屋外作品まで、約30年間の活動の全体像を紹介する。
「最近問題だと思うのは、たとえ同じ部屋にいても、みんなが小さな画面に支配されて、精神的に分断されてしまっていること。この展示では、鑑賞者が横になったり座ったり、様々な姿勢で自由に一緒に映像を体験する。それぞれがいろんなことを頭の中に思い描き、考え、そして鑑賞者がお互いを“見る”という体験をしてほしいと思います」