母がよく使っていた
ニベアクリーム。
物心ついた頃から「タクちゃん、ニベア塗って外出なさい!」って母からよく言われていました。小学生の時だったので、少しでも早く家から出たくて「なんだよ。めんどくさいなぁ〜」と思いながらバーッとクリームをすくって肌に塗って、それを無意識に髪にも塗っていたんです。塗っていたというよりも髪で拭いていた、という表現の方が正しいかもしれません。
ヘアスタイリストの仕事を始めて、国内外色々な現場を経験していくなかで、「どこかに髪につけるいいプロダクトないかなぁ〜」とずっと探していたんです。
ヘアスタイリングを大きく分けると、固めたいか動かしたいか、またはウェットかドライのどれかに分類されます。例えばジェルはウェットな質感で固めるもの。シャンプーをするまで触らないことを前提にしたプロダクト。ポマードはというと質感はジェルのようにウェットでホールド力がある。それなのに動かせるのが特徴です。つまり途中で変えられる。
しかしポマードもワックスも髪を触った後の手が問題。これは撮影にも支障を来してしまいます。なぜかというと、モデルさんが髪を触ったあとに洋服を直したくても、気軽に触れなくなってしまう。服が汚れてしまわないか心配で。
僕は自然に動く髪の毛がセクシーだと思っています。だから現場でもヘアを固めずに、動かす、動くことを前提にスタイリングすることが多い。現場でも「右からかき上げて」とか、「今頭振ってみて」とか指示したりします。自然な束感で髪の毛が動いて、手についても不快に感じないような、ワックスとヘアオイルの間のようなものを探していた時に、ニベアクリームのことを思い出したんです。
それから自分の道具ケースには必ずと言っていいほど、ニベアクリームが入っています。僕にとってはスキンプロダクツじゃなくてヘアプロダクツの一部になっているんです。
ニベアクリームの硬さや質感って絶妙なんです。クリーミーかつ潤いのある質感は、スタイリング剤としてもいいんですね。確かにほかのスタイリング剤に比べるとホールド力が劣る部分はあるのですが、でも時代的に固める整髪料を髪にたっぷりとつけてるのも少し違う。
ファッションがカジュアル化しているのと同様に、ヘアスタイルも変わっていくものです。今は程よく自然体がいいと思うんですね。だからニベアクリームは今のメンズのヘアスタイルとは、特に相性がいいと思うんですよ。
ニベアクリームをもっとうまく使えないか……色々と試してみました。ジェルやポマードをブレンドしてみたらどうだろう?とか。だけどもうまくいかなかった。しかしエッセンシャルオイルは相性が良かった。
使い方も色々ありますが、例えば毛先にだけつけて髪にツヤを与え、その後に髪の根元にニベアクリームをつけてボリュームを抑えるテクニックもあります。さらに裏技ですが、クリームだけでは髪のボリュームが抑えられない場合はベビーパウダーを混ぜるとか。ニベアクリームと一緒で、だいたい家に1つはあるアイテムです。