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時計を買おうと思ったら!まずは覚えたい、9つの基本用語

専門用語や仕組みを知らなくても、時計は使える。しかし知識が増えると、時計の世界はもっと面白くなる。そこで本誌で「BRUTUS WATCH ACADEMY」を連載中の髙木教雄氏を講師に迎え、その特別編を開講します。

本記事は、BRUTUS「それでも欲しい時計、どれですか?」(2024年11月1日発売)から特別公開中。詳しくはこちら

illustration: Hitoshi Kuroki / text: Norio Takagi

まずは覚えたい、時計を形作る基本用語

時計を買おうと思ったら、多くの人は事前に雑誌やウェブマガジン、SNSなどで情報を得、店頭ではスタッフからいろいろと説明を受けるであろう。その際、最低限の基本用語を知らなければ、理解もできないし、コミュニケーションもとれない。

腕時計を構成する要素は極めて数が多いが、まず知っておくべきは全部で9つ。うち8つが外装に関する用語なのは、腕時計は装身具でもあり、まず見た目が好みを左右するから。それぞれ機能を担い、素材や形状、構造が工夫される。

時計を分解したイラスト

1.ベゼル

風防を押さえ、時に付加機能を有する枠
ケース上でダイヤルを取り囲むリング。風防を固定する役割を持つ。ねじ込みや圧入、ビスなどでケースに組み込まれる。連続する溝を彫ったフルーテッド(コインエッジ)、宝石のセッティングなどの装飾が施されることも多い。また多様な目盛りを装備したり、回転式といった付加機能を持ったりするものもあり、ダイバーズウォッチで潜水時間を計る逆回転防止ベゼルが、その代表。

2.風防

ダイヤルを保護する硬く透明なカバー
広義では「風の影響を防ぐ器具・部品」。バイクの透明な風よけやマイクのスポンジカバーもこれに当たり、時計ではダイヤルを保護する透明なカバーを意味する。初期にはミネラルガラスが多用され、その後、強度があるアクリルやヘサライト(強化アクリル)といったプラスチック風防が登場。現在はダイヤモンドに次ぐ硬さで、衝撃にも強いサファイアクリスタル製が主流である。

3.ケース

ムーブメントとダイヤルを包む頑丈な鎧(よろい)
ダイヤルを取り付けたムーブメントを格納する容器。腕時計の場合、大半が上下にストラップやブレスレットを取り付けるためのラグが備わる。丸形が大勢を占めるが、角形やクッション、トノー(樽)など多様な形状が試みられてきた。素材には耐蝕性が高い18金やプラチナ、ステンレススティールが多用され、近年はチタン、セラミックや、さまざまな複合素材を用いたモデルも多い。

4.ブレスレット

腕時計だから不可欠な腕用金属バンド
ケースのラグに取り付け、時計を腕に固定するための金属製バンド。それ以外の素材の場合は、ストラップと呼ぶ。多くは、小さな金属パーツ(リンク、コマ)をピンやビスで連結して形作っている。長めに作られている場合が多く、リンクを外してサイズ調整(コマ詰め)する仕組み。ストラップも含め、工具なしで付け替えができるインターチェンジャブル式が増えてきている。

5.リューズ

外側から中の機械にアクセスする操作機
ケースに開けた小さな穴を介し、巻き芯と呼ばれる棒状のパーツでムーブメントにアクセスして操作を可能とする装置。主な役割は、ゼンマイの巻き上げ、カレンダー調整、時刻合わせ。大半は引き出し式で、リューズを引き出した位置によって、各操作が切り替わる仕組みになっている。水やホコリが侵入しやすいため、高防水のものは、ねじ込み式になっているモデルが多数派。

6.ダイヤル

そのモデルの美観を左右する腕時計の顔
日本語では文字盤。ムーブメントに備わるさまざまな機能を視覚化する役割を持つ。またフェイスとも言い換えられるほど時計の美醜を左右するため、装飾や色付けが工夫されてきた。時刻は主に針とインデックス(目盛り)で示され、窓を設けて日付などを表す仕組みも多用される。クロノグラフなどに見られるダイヤル上に配した小さなダイヤルを、インダイヤルと呼ぶ。

7.インナーケース

機械式時計の大敵である磁気のシールド
ケースの中にある、第2のケース。これを持たないモデルが、多数派だ。主な用途は、耐磁性能を高めるため。その場合は素材内部で磁気が流れやすく、外に逃がす透磁率が高い軟鉄で作られ、磁気シールドの役割を果たす。ほかセラミックなど切削加工が困難な素材のケースでは、ムーブメントを固定してケースとの隙間を埋めるためにも用いられ、この場合はスペーサーとも呼ばれる。

8.ムーブメント

時計の真の価値を決める、機能を司る
時計機能を司(つかさど)る機械部。ゼンマイを動力源とする機械式と、電気で動き、水晶(クォーツ)振動子とICとで制御してステップモーターを等間隔で動かすクォーツ式の2つが現在の主流だ。また機械式はリューズを回してゼンマイを巻く手巻きと、回転ローターが巻き上げる自動巻きに大別できる。各ムーブメントは、キャリバーと呼ばれる型番や名称を持ち、「Cal.XXXX」と表記される。

9.裏蓋

ムーブメントの出入口を塞ぐ門番
ムーブメントを出し入れするため、ケースの裏面に設けた開口部を塞ぐための蓋。現在多用される高防水が得やすいねじ込み式は、1926年に〈ロレックス〉が発明した。ほか、はめ込み式(スナップバック)、ネジ留め式が主な構造である。また裏蓋の中央を開口してサファイアクリスタルをはめ、ムーブメントを見せるシースルーバック(トランスパレントバック)の採用例も多い。

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