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〈BOTANICAL ARRANGEMENTS TSUBAKI〉山下郁子・宮原圭史、日々の花の飾り方

花のプロは普段の空間をどう飾る?東京の人気の花屋を訪ねて、日常の暮らしに馴染む花と器の選び方や、真似したくなる飾り方を教わりました。

photo: Tetsuya Ito / Text: Masae Wako

旬の草花とガラス花器で、
いつもの景色を少し変える

「家と、場の空気が変わる。部屋の雰囲気が変わるだけでなく、一瞬で気持ちを切り替えることができるんです」

と話すのは、花と植物にまつわる活動を続ける〈TSUBAKI〉の山下郁子さんと宮原圭史さん。実店舗はないけれど、旬の花材の宅配便「季節の花だより」が大人気。2人が選ぶ草花や枝ものが届けられる。

「少しずつ分けて家のいろんな場所に飾ると、それぞれの場で違う空気を感じられると思います」

そう話す山下さんに、日常に似合う花飾りを教わった。今日の花材は、白、ブルー、黄色が中心。まずはそれらをテーブルやキッチンカウンターの上で広げてみる。花を見ながら器との組み合わせを考えるのは、洋服を選ぶ時にも似た楽しさだ。

飾るコツは3つ。1つ目は花がより美しく見える「場所」を選ぶこと。

「透明感のある花は、柔らかな自然光が差し込む場所を探してガラスの器に生けるのも素敵です。光を通した水の表情も楽しめますよね」

2つ目は、花や茎が「どう見えるか」を意識すること。

「茎のシルエットがきれいなものは、壁を背景にして目線の高さに置きたいし、上から覗き込んだ姿が美しい花は、見下ろせる場所に飾りたい。茎を短めに切って生け、低いスツールや玄関の床に置くと、日ごとにつぼみが膨らんで花開いていく様子がよくわかる。その瞬間瞬間の姿にハッとします」

都立大学 花屋 器
いい香りを放つオオヤマレンゲは低めの位置に飾りたい。花器はパリの〈ラ・スフルリー〉製。

どこから見たらいいのか迷った時は一本手に取って、上から、下から、くるくる回転させながら……といろんな方向から眺めてみる。そうすれば美しく見える向きもわかるはず。

そして3つ目のコツは「花器」。

「1~2輪挿せる小さな花器があると、気軽に飾れるようになる。盃を使うのもおすすめです。1つでもいいし、いくつか並べると存在感も出る。花を器の縁に掛けるように挿すと安定します」

都立大学 花屋 器
明治期の盃にワスレナグサを挿した。小さい器は複数並べると素敵。花は水に触れないように。
都立大学 花屋 器
キッチンには小さな草花とハーブが似合う。
都立大学 花屋 器
洗面室にはシルエットが美しいシラユキゲシとガラス器を。二十四節気七十二候と詩が書かれた短冊形のカレンダーと並べて飾った。

最後に、これから花飾りを始めようと考えている人へのアドバイスも。

「“心に残る花”が一つでも増えると、日々が豊かになると思うんです。花が変化する姿を見て心が動く、そんな瞬間を楽しめたらいいですね」

都立大学 花屋 器
小さなハナニラ(右)とスミレ(左)を古いガラス器に挿し、直径40㎝の石皿にのせた。リビングなどの広い空間にも馴染む飾り方。