長野さんの焚き火のテーマ:荒野へのあこがれ
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noyamaの焚き火のテーマ:アメリカン・ガールスカウト
しみずまゆこ
長野さんの焚き火ってすごくワイルド。直火と、木で作ったトライポッドの組み合わせが、かっこいいですね。
野川かさね
トム・ソーヤみたいだよね。焚き火の上にずーっとぶら下がってるお肉が、目の毒です(笑)。
長野修平
僕の場合は、目の前に焚き火があって、そこに肉が吊るしてあるっていうのが、とても好きな風景なんだよな。火が燃えてると、そこに人の営みが感じられて、すごく安心感を覚えるというか。
しみず
このお肉は、そのまま食べるんですか?
長野
それもいいけど、細かく切ってスープに入れたり、串に刺して、焚き火で焙(あぶ)ってもおいしいよ。
野川
素敵!串になにかを刺して焙るって、焚き火ならではですよね。
長野
2人とも上手に火をおこすねえ。普段どんな焚き火をしてるの?
野川
遊びの延長みたいな感じです。毎回何かしらテーマを作って、道具や食材を用意して。ちょっとおままごと感覚に近いかもしれません。
しみず
今日のテーマはアメリカン・ガールスカウト。マシュマロを枝に刺して焼いたりポップコーンを作ったり。焼きフルーツのアイスのせも定番メニュー。女の子がきゃあきゃあ言いながら楽しめるようなエンターテインメント性も重視しました。
長野
「焚き火=おままごと」っていう発想は僕にはなかったなあ。それにしては、すごく本格的(笑)。
しみず
本気のおままごとです(笑)。
長野
今の焚き火はもっぱらレジャーとして楽しむものだけど、昔はもっと生活に密着していたものなんだよね。炊事やお風呂を沸かすためには焚き火の技術が絶対に欠かせなかったから。僕としては、本当は必要に迫られて焚き火をしたいっていう気持ちがあるんだよ。
野川
私の焚き火の入口は、レジャーとしてのキャンプではなくて、原野を旅する時の手段の一つだったんです。知床半島のカヤックツアーに参加したことがあるんですけど、海から上がった後、冷え切った体を温めてくれる焚き火って偉大だなあって。一刻も早く火に当たりたくて、みんな必死に流木を集めたりして。
長野
たしかに。もともと、焚き火は命を守るためのツールだもの。だから、火をきちんとおこせる状態に自分をしておけば、万が一の時でも最低限の煮炊きはできる。これって、人間を一個の生き物として捉えた時に、すごく重要なことなんじゃないかなと僕は思うんだよね。
焚き火は夢見た風景に自分自身が入っていく手段
(焚き火でマシュマロを焼く3人)
しみず
長野さん、マシュマロ焼くのすごい上手!やっぱり子供の頃から焚き火に親しんでたんですか?
長野
実は焚き火を本格的にやり始めたのは30歳を過ぎてから。試行錯誤しながらいろいろ学んだよ。例えば薪でいうと、針葉樹は油を多く含むから火つきが良いけど、すぐに燃えちゃう。逆に広葉樹はゆっくり、長く燃え続ける。そういう特性も徐々にわかるようになってきた。
野川
私たちも回数が増えるたびにどんどん上手になってる気がします。
長野
上達するのも焚き火の魅力。
野川
失敗から学ぶのも醍醐味です。
長野
キャンプの時って忘れ物をすることが結構多いでしょ?そういう時に、現地にあるものでなんとかしようと工夫する。そうするとどんどん応用が利くようになってくるし、装備もシンプルになっていく。
しみず
シンプルに焚き火ができるって、一番かっこいいですよね。
長野
昔はたくさん道具を持っていって、凝った料理を作ったりしてたけど、それだと料理の準備と片づけだけで、一日が終わっちゃう。
しみず
せっかく焚き火するなら、ゆったり囲みたいですもんね。
野川
長野さんは、どんなふうに焚き火をするのが理想なんですか?
長野
昔の西部劇。あの手の映画って荒野で焚き火をするシーンが出てくるじゃない。便利な道具なんてないから、そこらへんにある木を燃やして、捕まえた兎やなんかを丸焼きにして。ああいうのにすごく憧れた。
野川
私たちの理想はアメリカの児童文学『大草原の小さな家』!西部開拓時代に西へ移動していく一家の話なんですが、家族で焚き火を囲むシーンが印象的で。食べ物も、あの物語の中からインスピレーションを得て作ったりしているんです。
長野
焚き火っていうのは、理想とする風景の中に自分自身が入っていくためのツールみたいな側面もあると思うんだよね。
しみず
それ、すごくわかります。
長野
なんだか格好いいこと言っちゃったけど、一番影響を受けたのはアニメのギャートルズかも(笑)。
野川&しみず
あ、あの巨大骨付きマンモス肉!あれこそ最大の「焚き火ロマン」です!
GEAR
長野さんの焚き火道具
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S字フック:ホームセンターなどで売っているごく普通のもの。これを鎖などと組み合わせ、トライポッドに肉や鍋などを吊り下げるのに使う。
ロープ:木の枝でトライポッドを作る時、先端を結ぶ際に使用する。化繊系のものは火に弱いので、コットン製のものが基本。
剣ナタ:サイズや形状が異なる剣ナタを各種揃えている。薪の表面を削いで火つきを良くしたり、枝を払ったりするのに使う。
火吹き竹:手作り。上から節を抜いていき、先端にドリルで穴を開けるだけ。好みに合わせて長さや先端の穴の径を調節する。
手斧:薪を割る時に使う。柄の部分は自分で削った木に取り替えてカスタマイズ。壊れても直して使うのが、長野流の焚き火道具の扱い方。ほかにも竹製のトングやカトラリー、自分で編んだカゴなど、手作り焚き火道具が多数。
noyamaの焚き火道具
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〈マウンテンリサーチ〉のアナルコカップシリーズ:オールステンレス製で雨ざらしにしておいても錆びない。そのまま火にかけられるので、食器やカップとしての用途のほか調理器具としても重宝する。
グローブ:コットン製の厚手グローブは薪を掴んだり、熱い鍋を持ったりするのに便利。ステッチの入り方も独特で、味のあるデザインがいい。焚き火の際はマッチなどの小物を収納するコットンキャンバス製のポケット付きエプロンも必須。
カッティングボード:木工作家である、しみずまゆこさんの手製。床板などに使われるダグラスファーの古材を利用して製作。厚みはあるが驚くほど軽量。
マッチ:犬のプリントに一目惚れしてアメリカで購入。柄が長いので、火をおこす時はもちろん、キャンドルランタンに着火するのにも使い勝手がいい。
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