Learn

Learn

学ぶ

パンプアップの仕上げはトンチの効いた“掛け声”。そのひと言でビルダーの筋肉は輝く

ボディビルコンテストは、鍛え抜かれた極限の体を見るのが最大の醍醐味。だが、そのサイドメニューとして楽しめるのが“掛け声”だ。出場選手たちに向けて観客から投げかけられる言葉は、選手たちを励まし、会場を盛り上げる。瞬発力とセンスが問われるボディビルの掛け声を、クラブ創立61年の早稲田バーベルクラブのメンバーに解説してもらった。

Text: Shigeo Kanno

掛け声の基本
・掛け声は、観客であれば誰でもかけていい
・励ます、褒める、例えるが基本
・時事ネタなどを取り入れたセンスが問われる
・一般の大会よりも学生大会の方が、掛け声が激しい

デカい


筋肉量が多く、大きいことを示す。「背中が冷蔵庫!」などと表現することも。

キレてる

筋繊維が細かく美しく見える状態。刃物で切ったような美しいカット(筋肉の溝の深さ)という意味。

バリバリ


筋トレで体を絞ると肌の表面に深い筋が表れ、ヒビ割れたように見えることから例えられる表現。

ナイスバルク!

体の厚みを褒めた掛け声。バルクとは筋肉の厚みを意味する。

腹筋が手榴弾!

腹筋の6パックのカットや大きさが手榴弾の模様に似ている。他に「グレネード」「パイナップル」「板チョコ」「カニの裏」も同義語。

眠れない夜もあっただろう!

ボディビルダーは、大会に向けて激しい減量をする。そのため、空腹で夜に眠れないことが当たり前だ。そんな夜を過ごした選手たちを讃える言葉。

巨乳!

大胸筋の大きさを表現した言葉。男性選手に対して使われる。「胸がケツみたい」も同義語。

プロテイン飲んだシルバニアファミリーか!

コンテストの予選段階では数名のグループに分かれて、横並びでポーズを取る。ステージに並んだ女性ボディビルダーをシルバニアファミリーに例えた言葉。ガールズグループのNiziUに例える掛け声もある。

新元号は筋肉です!

日本の新元号が発表された時期の大会で飛び出した時事ネタ。

肩にちっちゃいジープ乗せてんのかい!

肩と大胸筋上部がゴツいジープのように盛り上がっていること意味する。他にも、肩に浮き出た血管をマスクメロンに例えた「肩メロン!」などがポピュラーな言葉として知られている。

脚と腕が入れ替わってるよ!君の名は。

映画『君の名は。』で、少年と少女が夢の中で入れ替わることに例えた言葉。鍛えられた腕が脚のように太いことを示している。

肉詰まりすぎ、密です!筋肉は密でもいいんだよ!


コロナ禍で大会での掛け声が禁止されていたときに、某テレビ番組の企画で生まれた掛け声。

○番いいぞ!いや、○番の背中も!

特定の選手一人を褒めた観客に対して、他の観客が別の推し選手を注目させるときのカブせ技。

○○番(選手の名前)!○番!

おじさんたちの野太い掛け声が飛ぶのが、一般大会の特徴。学生大会と違い、名前やゼッケン番号の連呼が多い。

三角チョコパイ!

逆三角形をつくり上げた広背筋と真っ黒に焼かれた肌のコラボレーションを褒めた言葉。背中の筋肉そのものを讃える言葉として、「鬼の顔」「クリスマスツリー」などもある。


コロナ禍では、大会の中止や掛け声の禁止がルール化されていたが、この春からは、通常のルールに戻りつつある。初心者がボディビルを楽しむために、日本各地で行われる大会に足を運んで、リアルなボディビルダーと掛け声の楽しさを味わってみよう。