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今NYで最も注目されるブランド〈BODE〉の、エモーションを伝える場作り

現代のかっこいい大人たちと話がしたい。NYで、手仕事やクラフトの良さを広め、注目を集めるブランド〈BODE〉。デザイナーのエミリー・アダムス・ボーディと、彼女のパートナーであり、同ブランドのフラッグシップショップの内装を手がけた、〈Green River Project〉のエーロン・アジュラの元を訪ねました。

photo: Omi Tanaka / coordination&text: Momoko Ikeda

服が持つナラティブを生かし
独自に進化する

今NYで最も注目されるブランドの一つ、〈BODE〉。アンティークのキルトやレース、ホースブランケットなどを使って作り出される一点ものを中心にしたアイテムたちは、しっかり主張のあるピースでありながらも着ている人を優しく包む魅力がある。

彼らは3年ほど前にNYのチャイナタウンにフラッグシップショップを開いた。内装は、デザイナーであるエミリーのパートナーのエーロンによる〈Green River Project〉が手がけ、こちらも服と同じく人の手作業を感じさせる心地よい空間に仕上がっている。

パンデミックで市内のあらゆる店の閉店が目立っていたが、この界隈は〈BODE〉の出現を皮切りに、ほかのアパレルやヴィンテージショップ、またカフェなどが新たにでき始め、ここ1年ほどでぐっと盛り上がりが増した。

「最近はデジタルに焦点を当てたブランドが多いけれど、私たちはフィジカルスペースを持つことに楽しみを見出してるの。お客さんにスタジオで働く私たちとちゃんとつながりを感じてもらいたいから、ショップの横にカフェ兼テーラーショップもオープンして、ビスポークと修理の場所も作ったわ。

そこには、〈BODE〉のアイテムに限らずどんな私物を持ってきてもらっても構わない。私たちはアンティークのテキスタイルをよく扱っているから、保存方法などの知識も伝授できるし、それによって家族の思い出の品をよりいい状態で保管したいと思っている人たちや収集家とつながれたらと思っているの」。そう話すのはデザイナーのエミリーだ。

テーラーショップの場所はもともと老舗のコーヒーショップで、惜しまれながら閉店したという経緯があったが、彼らがこのような形で引き継いだことで近所の住人たちにも受け入れられ、「近所の人が私たちを信用しておばあちゃんの貴重なドレスやデニムを修理に持ってきてくれることもある」とか。

そんなマジックを起こせる新しいショップは実際少ないと思うが、そのトリックは「エモーションを伝える場を作るように心がけていること」だとエーロンは言う。

イロコイ・インディアンが作るお土産たち
エミリーが集めているナイアガラの滝付近で売られているイロコイ・インディアンが作るお土産たち。

クラフトのストーリーを伝える
マキシマリスト

「よくチームと話すのは、消費者は今まで以上にスマートだということ。満足させるためにはお店は心地よさと、人の心を揺さぶるような体験の両方を提供できないといけないと思ってるんだ。エミリーは南部出身で“サザン・ホスピタリティ”を重要視もしてるし、ショップスタッフはアーティストやフォトグラファーなどが多いから、お客さんとは商品についてのみならず、カルチャーについても語られる場になっているよ」

内装デザインにおいても、店内のものはインテリアの細かな部分でさえ一つ残らず見て回る人も多く、気は抜けない。

「コンクリートやスティールで作られた、ミニマルなお店が世の中には多いけど、エミリーはそれとは真逆で“マキシマリスト”。アマチュアのアーティストが手がけたものや誰かが家で作ったような埋もれがちなクラフトの中にも素晴らしいものはたくさんあって、彼女はそれを見つけるのが得意なんだ。

その世界観をお客さんが体感できるよう、常に店内に置くオブジェの見せ方は工夫してる。彼女のそんなパーソナリティはとても個人的なことでもあるから、結果としてほかの誰とも違うことをできているとも思うしね」

歴史やクラフトが好きなエミリーが集めてきたものは、ブルックリンのスタジオでもそこら中で見て取れる。中でも、特に最近彼女がインスパイアされたというのが、ナイアガラの滝の周りで売られていたお土産たちだ。

「あのエリアに住むイロコイ・インディアンによって作られた小物たちは、とてもカジュアルではあるけれど、特定の場所でしか買えない特別さがあるの」。ビーズの色使いやその味のある刺繍は、もの自体から発せられるナラティブに満ちていて、それはまさに〈BODE〉の服とも通ずる魅力に溢れている。

手仕事やクラフトの良さをNYのファッションシーンにおいて再認識させた〈BODE〉の周りには、共感する人たちによるコミュニティも形成され始めていて、その人気も上昇中。その後押しを受けて商品の生産数も増やし、店舗も拡大していきたいという2人だが、あくまでもビジョンをキープしたまま、とエーロンは強調する。

「インドに行くと3、4世代続くテーラーがあって、その周りの小さなコミュニティによってサポートされて成立しているお店があったりする。大きなマーケットには行かず、そこでみんな買い物をするんだ。それってすごく美しいショッピングの経験だと思うし、〈BODE〉をほかの場所で開いても、お店に足を踏み入れたら何かしら特別な体験ができる場所にしたいと思ってるよ!」

〈BODE〉デザイナーのエミリー・アダムス・ボーディ、〈Green River Project 〉ファウンダーのエーロン・アジュラ
エミリーが集めるアンティークのキルトや小物と、エーロンが選ぶ家具が調和するブルックリンのオフィス。2人は常にインスピレーションを共有し合う、公私共にパートナーだ。