〈Blue Tokai Coffee(ブルートーカイコーヒー)〉をご存じだろうか? インド発のスペシャルティコーヒーブランドで、昨年、日本に海外初進出を果たし、この春から本格展開をスタートさせている。ここ数年、ベトナムやタイ、インドネシアなど、アジア圏のロースタリーが注目されているが、このブランドがユニークなのは、例えばエチオピアやグアテマラといったアフリカ大陸・中南米の著名な産地の豆は扱わず、原産国、つまり「インド産」のコーヒー豆のみを紹介している点だろう。
〈Blue Tokai Coffee〉は2013年、学生時代をアメリカで過ごし、アメリカのコーヒー文化に親しんだマット・チタランジャン氏がニューデリーで創業。今やインド全土で45店舗(2022年5月現在)のカフェを展開する国内最大のスペシャルティコーヒーカンパニーとなっている。
創業のきっかけは2010年代初頭、チタランジャン氏がアメリカから帰国した際、コーヒー豆の生産大国でありながらカフェやレストランで提供されるコーヒーの味が洗練されておらず、不満を抱いたことに遡る。多くの生産国がそうであるように、良質な豆のほとんどがコーヒー消費国に輸出され、国内に流通していない現状に社会的な問題意識を抱いたのだ。
“シングルエステート=農園単位”で味わうという新たなスタイル
チタランジャン氏は当初から、農園との直接取引を開拓してきた。生産に関わる情報を高い透明性で発信することで、インドの人々にコーヒーカルチャーを浸透させ、生産者の意識もより前向きに変えていった。いわばインドの次世代コーヒーシーンを担う立役者。
「インド産コーヒーの魅力をインドの人々に届ける」ことが創業時に掲げたミッションであり、〈Blue Tokai Coffee〉が自国の豆のみを扱うのは、それゆえなのだ。
コーヒー豆はすべて「スペシャルティコーヒー協会」でカップスコア80点以上を付けたハイグレードのもの。そしてシングルオリジンよりもさらに厳密に定義された「シングルエステート(単一農園)」に分類され、“農園単位”のテロワールが味わえるのが何よりの特徴だ。
ハイクオリティでいてリーズナブル、その理由は?
さて、まずは豆の状態を見てほしい。とても健やかで美しいことに驚くはずだ。それを見れば、コーヒー豆が育った環境や製造方法、最後のハンドピックに至る焙煎の工程まで、丁寧に行われていることが分かるはず。
品質を守るため、日本での販売分はインドから生豆を送り日本国内で焙煎。この焙煎を〈フィロコフィア〉の粕谷哲氏が監修しているという点も、なんとも心強い。
さらに驚くのはその値段だ。スペシャルティコーヒーでありながら200g1,020円〜という、思わず二度見してしまいそうな価格設定も、「日常的に繰り返し飲んでほしいから」というチタランジャン氏の明確な意思表示。この(いい意味で)愚直とも言える真摯な姿勢を知れば、コーヒーファンならずとも飲んでみたいと思うはずだ。
夏季限定!〈東京ミッドタウン〉で国内初のポップアップストアを開催中
日本での直営店はまだ準備中のため、オンラインでの販売のみだが、現在〈東京ミッドタウン〉内に初の試みとなるポップアップストアを出店中。
7種類のシングルエステートの豆のほか、3種の日本限定ブレンド「茜(中煎り)」「藍(中深煎り)」「菫(深煎り)」やドリップバッグ、シルクスクリーンのカバーが美しいオリジナルノートなど、グッズも多数販売する。
ショップ内にはインドの伝統芸術をモチーフにしたアートワークが飾られ、本国のカフェと同様の空気感を体感することができる。
POPUPでは豆などの販売だけでなく、ハンドドリップコーヒーやコールドブリュー、オーツミルクを使用したアイスラテなどドリンクメニューも展開。
ドリップコーヒーは全10種類の中から好きな豆を選べるのが嬉しい。気になる農園の豆を実際にテイスティングできる貴重な機会だ。
〈東京ミッドタウン〉に突如出現したクジャクのロゴのコーヒースタンドは、立地の良さも相まって連日大盛況の模様。インド発のスペシャルティコーヒーのポテンシャルを、この夏、ぜひ体験してほしい。