【珍奇の現場】鉱物結晶形態学の殿堂 〜高田クリスタルミュージアム探訪記〜

珍奇植物、珍奇昆虫、珍奇鉱物などの「珍奇シリーズ」の編集を担当する川端正吾さんが、そのビザールな現場からホットな情報を発信!第16回の今回は鉱物結晶の美しさだけでなく、それらをカタチ作る構造について知りたくなった人にぜひオススメしたい、鉱物結晶博物館へ。

artwork: Keiji Ito / photo&text: Shogo Kawabata

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自然がつくり出す鉱物の結晶。その美しさを前に、「どうしてこんな形になるのだろう?」と不思議に思ったことはないだろうか。本誌でも基本構造についてのコラムを設けたものの、取材の際には「x面の位置が……」「ミラー指数が……」といった未知の専門用語が次々と飛び出し、正直、なんとなく理解した気になってやり過ごしてきた場面も多かった。鉱物の美しさを語る特集をつくっておきながら、これはいかん!もう一度基礎から学び直したい!そう思い立って訪れたのが、このミュージアムである。

結晶形の模型

ここ「高田クリスタルミュージアム」は、おそらく日本で唯一、結晶形態学の解説展示に特化した博物館。館長の高田雅介さんは、結晶形態学に関する著書も多く、結晶の形の秘密を広く伝える活動を続けるスペシャリストだ。館内に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは「7つの結晶系」の模型。鉱物の本では必ず登場するこの「7つの結晶系」だが、実はこれ、鉱物の“外形”そのものを分類したものではない。恥ずかしながら、自分はこれをかつて「すべての鉱物の形がこの7つに当てはまるの?それにしては当てはまらない形の鉱物もたくさんあるけど……」などと誤解していた。しかし、これは鉱物を形作る「原子が並ぶ最小単位=単位格子」の形を示すものなのだ。

そして、この単位格子の形は7系統しか存在しない。鉱物は、この小さな原子ブロックが規則正しく積み重なってできるため、原子配列の幾何学的な制約により正五角形や正七角形の結晶面は存在しないというわけである。鉱物の“外形”、つまり実際に目にする結晶の形は、この7つの“系統”に限定されるわけではなく、実に多様なのだ。

……と、こうして文章でがんばって説明しようとはするものの、どうにもわかりにくい。比較的わかりやすかった展示の解説でも文字にするとこうなるのか……。

館内で展示されている立体模型などを実際に目にすると、その仕組みが驚くほどスッと理解できるのだけれど。これは、もう一度実際行ってみて、その展示や高田館長の解説を体験してみてほしい。鉱物の美しさを“眺める”だけでなく、その美しさを形づくる“構造”にまで踏み込みたくなった人にこそ、このミュージアムはホントにおすすめなのだ。迷わず行けよ、行けばわかるさ。

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