LAをベースに活動するカクタスショップの〈Cactus Store〉。植物の販売だけでなく、ランドスケープの製作やアパレルの展開など、植物をテーマに多様な活動を行うデザインスタジオでもある。「珍奇植物」特集でも登場してもらい、2017年には彼らの作った写真集『Xerophile』の日本でのディストリービューションをSTRAIGHTで行ったこともあった。
そんな彼らから日本でランドスケープを造る計画があると聞き心待ちにしていたところ、ついに来年、始動することになったそうだ。
場所は熱海にある吉村順三設計の邸宅の庭。現在、ファッションブランドの〈Tu es mon Tresor〉が改修を進めている建物だ。この邸宅が造られた1977年にちなんだ『1977-』というテーマのもと、ファッションと、建築、デザイン、写真をはじめとしたアート領域を横断するプロジェクトのひとつとして行われる。
「時の経過とともに次第に焦点を失った庭園に込められた吉村の思想を、現代の文脈に再び蘇らせる」という〈Tu es mon Tresor〉の視点に、〈Cactus Store〉が共鳴して今回のコラボレーションに至ったのだという。
今年の8月に、代表のカルロスをはじめ、ランドスケープデザイナーのマリナ、ニナからなる〈Cactus Store〉チームが来日。数日間この邸宅に宿泊してイメージを膨らまし、「窓から見える景色にフォーカスした庭づくり」がテーマとなった。
また、本来、カクタスを使ったドライガーデンが得意な彼らだが、今回は『1977-』のプロジェクトが内包する日本文化やモダニズムの文脈を受け、伝統的な日本庭園や、ブラジル人ランドスケープデザイナー、ロバート・ブール・マルクスの作品を独自に解釈。ディクソニアなどのシダ類をメインとした湿潤な熱海に合う植物をメインに構成されるプランとなっている。他にも、かつての施主が勤しんだという園芸を連想させるような色彩豊かな植栽を再現するため、ブロメリア科の中から比較的耐寒性のあるディッキアやヘクティア、プヤなども植栽に使われる予定だそうだ。屋外では傷んでしまいそうな植物を管理する温室も計画されているそう。
完成・一般公開は来春の予定で、『Xerophile』の写真展のほか、〈Cactus Store〉とのコラボウエアも展開される予定。
カルロスの叔父で、この庭の植栽を担当するジョニーは、LA在住の幾人かの日本人庭師のもとで経験を積んだそうで、まだまだ構想中の庭を最終的にどのようにまとめあげるのか非常に楽しみだ。施工の際はぜひ見に行ってみたいと思っている。