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【珍奇の現場】「鉱物の美学」についてまとめた初のアートブックが刊行

珍奇植物、珍奇昆虫、珍奇鉱物などの「珍奇シリーズ」の編集を担当する川端正吾さんが、そのビザールな現場からホットな情報を発信!第5回の今回は、川端さんが手がけた世界一の鉱物コレクター、ヴィルドファング氏のコレクションをまとめたアートブックをご紹介します。

artwork: Keiji Ito / photo & text: Shogo Kawabata

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当代きっての世界的ファインミネラルコレクター、ファビアン・ヴィルドファング。特集「珍奇鉱物2」でも紹介したその審美的なコレクションは、他のそれとは一線を画している。美しさが第一の基準となるファインミネラルの世界でも、時に希少性や由来(過去に博物館や著名コレクターのコレクションであったか、など)が、その価値を上げることがあるが、彼は、そうした副次的な要素を極力廃し、芸術性にのみこだわって石を選ぶスタイルを貫いている。

そんな彼のファインミネラルに対する「美学」についてまとめたアートブック『The Wildfang Collection : Where Minerals Meet Art』を、縁あって作ることができた。鉱物の芸術性をテーマにしたおそらく初めての本になると思う。

『The Wildfang Collection : Where Minerals Meet Art』の表紙。黒のマンガナイトに真紅のロードクロサイトが。

まずは、そのコレクションを大きな写真で存分に楽しんでもらうグラビアページから始まる。誌面には鉱物名や産地データ、ノンブルに至るまで、写真以外の要素は一切入れていない。これは彼のプライベートギャラリーの展示ポリシーを反映させたものだ。彼のコレクションを飾るキャビネットには、標本以外に、ラベルなどの情報は一切置かれていない。まずは先入観なく、その造形を楽しんでほしい、という計らいだ。データが気になる標本は、スマホでコードを読み込むことで知ることができる。本のほうもグラビアページには一切の文字情報はないが、巻末に標本写真のサムネイルとともにデータのリストをまとめるスタイルにした。

読み物としては、彼のファインミネラルに対する美学を「形状」、「比率」、「バランス」、「テクスチャ」など、様々な項目ごとに紹介。今回、コーディネーションや翻訳を手がけてくれたUSK MINERALSの内田佑介氏による推薦文も掲載している。

この本は11月23日から26日に東京都現代美術館にて開催される「TOKYO ART BOOK FAIR 2023」のSTRAIGHTブースにて販売。

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