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ムッシュ・イヴ・サンローランのミューズであり親友。ベティ・カトルーの巡回展はもう行った?

〈サンローラン〉が東京・天王洲の寺田倉庫 B&C HALL / E HALLにて開催している「BETTY CATROUX - YVES SAINT LAURENT 唯一無二の女性展」。その内容は、ブランドの創業者でありデザイナーのムッシュ・イヴ・サンローランが生前、信頼を置いていた盟友、ベティ・カトルーを主役に据え、メゾンのスタイルを提示する巡回展だ。

text: Minori Okajima

ベティ・カトルーとは
どんな人物なのか?

この巡回展について知る前に、まずはベティ・カトルーとは一体どんな人物なのかを紐解こう。ベティ・カトルーは、1960〜70年代を中心にムッシュ・イヴ・サンローランのミューズとして活躍し、多くのアーティストに影響を与えてきた“永遠のファッションアイコン”と称されるモデルである。モデルとしてのキャリアはもちろんのこと、一生涯の友としてイヴとの親交を深めたことで知られている。

プラチナブロンドの髪に長身でスレンダーなシルエットで、大胆なエレガンスさを備えたベティ。彼女は、60年代初頭、ウィメンズファッションに男性的なワードローブの要素を取り入れるというイヴの革新的な挑戦に、なくてはならない存在だった。イヴが「自身の片割れ」と語るほど、彼女は「サンローランの精神」をもっとも理想的な形で表していたのだ。

「ベティは時代の象徴である」

そんなイヴの言葉からも分かるとおり、絶大な信頼を置いていたのが彼女だった。

イヴ・サンローランのミューズであり親友、ベティ・カトルー
マスキュリンなアイテムを取り入れ、それでいて女性的なエレガントさを併せ持つベティのファッションスタイルは、メゾンに大きな影響を与えてきた。©︎All rights reserved
イブ・サンローランとベティ・カトルー
イヴ・サンローラン(左)とベティ・カトルー。二人の仲の良さは、ツーショット写真の多さからも窺える。会場内には、ベティにまつわる歴史的な写真が複数展示。©︎All rights reserved

本展のきっかけは
ベティからのある提案から

2019年、ベティはピエール・ベルジェ=イヴ・サンローラン財団に500点もの作品を寄贈。それがきっかけとなり、今回の展覧会の構想が浮かび、世界3カ国を旅することとなった。その監修は〈サンローラン〉のクリエイティブ・ディレクターであるアンソニー・ヴァカレロ。ベティの唯一無二の個性が、どのように〈サンローラン〉のスタイルに影響を与えてきたのかを魅力的に映し出している。

会場にはさまざまな部屋(ブース)があり、“70年代”や“テーラード”といった、メゾンにとって重要なテーマを設け展示が構成されている。ベティが所有していたワードローブや彼女にまつわる写真などに加えて、プレタポルテライン〈サンローラン リヴ ゴーシュ〉のウエアとアクセサリーなども展示。ここでしか見られない希少なコレクションが一堂に会する、またとないチャンスだ。

過去にはパリのイヴ・サンローラン美術館や、上海のMoCAでも開催された本展。東京展ではカフェやブックストアの併設や、2002年にパリのポンピドゥーセンターにて開催されたメゾンの回顧ショーにも登場したモデルの冨永愛さんによる音声ガイドなど、ともに展示を楽しめる要素も満載となっている。

時代とともに移ろい、またリバイバルされていく。そんなファッションのループに反し、常に独自の“モード”な感覚を研ぎ澄まし続けている〈サンローラン〉。そんなブランドの魅力が会場に凝縮した本展は、ファッション好きには堪らない空間だ。会期はあと少し、ぜひ一度足を運んでみてはいかが。

寺田倉庫 『BETTY CATROUX - YVES SAINT LAURENT 唯一無二の女性展』