ベティ・カトルーとは
どんな人物なのか?
この巡回展について知る前に、まずはベティ・カトルーとは一体どんな人物なのかを紐解こう。ベティ・カトルーは、1960〜70年代を中心にムッシュ・イヴ・サンローランのミューズとして活躍し、多くのアーティストに影響を与えてきた“永遠のファッションアイコン”と称されるモデルである。モデルとしてのキャリアはもちろんのこと、一生涯の友としてイヴとの親交を深めたことで知られている。
プラチナブロンドの髪に長身でスレンダーなシルエットで、大胆なエレガンスさを備えたベティ。彼女は、60年代初頭、ウィメンズファッションに男性的なワードローブの要素を取り入れるというイヴの革新的な挑戦に、なくてはならない存在だった。イヴが「自身の片割れ」と語るほど、彼女は「サンローランの精神」をもっとも理想的な形で表していたのだ。
「ベティは時代の象徴である」
そんなイヴの言葉からも分かるとおり、絶大な信頼を置いていたのが彼女だった。
本展のきっかけは
ベティからのある提案から
2019年、ベティはピエール・ベルジェ=イヴ・サンローラン財団に500点もの作品を寄贈。それがきっかけとなり、今回の展覧会の構想が浮かび、世界3カ国を旅することとなった。その監修は〈サンローラン〉のクリエイティブ・ディレクターであるアンソニー・ヴァカレロ。ベティの唯一無二の個性が、どのように〈サンローラン〉のスタイルに影響を与えてきたのかを魅力的に映し出している。
会場にはさまざまな部屋(ブース)があり、“70年代”や“テーラード”といった、メゾンにとって重要なテーマを設け展示が構成されている。ベティが所有していたワードローブや彼女にまつわる写真などに加えて、プレタポルテライン〈サンローラン リヴ ゴーシュ〉のウエアとアクセサリーなども展示。ここでしか見られない希少なコレクションが一堂に会する、またとないチャンスだ。
過去にはパリのイヴ・サンローラン美術館や、上海のMoCAでも開催された本展。東京展ではカフェやブックストアの併設や、2002年にパリのポンピドゥーセンターにて開催されたメゾンの回顧ショーにも登場したモデルの冨永愛さんによる音声ガイドなど、ともに展示を楽しめる要素も満載となっている。
時代とともに移ろい、またリバイバルされていく。そんなファッションのループに反し、常に独自の“モード”な感覚を研ぎ澄まし続けている〈サンローラン〉。そんなブランドの魅力が会場に凝縮した本展は、ファッション好きには堪らない空間だ。会期はあと少し、ぜひ一度足を運んでみてはいかが。