「誰も目に留めないし、特別ドラマティックでもない。けれども確かに街のあちこちに存在する、なんでもない“生活”に興味があるんです」そう話す今泉力哉さんは、恋愛群像劇をはじめ、ありふれた日常を繊細でいて軽やかに、リアリティをもって描き出してきた映画監督。今回はその“生活”への好奇心を携えて、「あしたのベストバイ」企画に参加してくれた。
3組限定、1本10万円という破格の金額で募るのは、今泉さんに短編映画を撮ってもらえる企画への参加。購入者自身はもちろん、その家族や友人、暮らす街や思い出の場所など題材は相談のうえ、10分前後の映像を作ってもらえるという内容だ。完成作品はDVDなどで受け取ることができ、一生の思い出に、プレゼントに、お店のPR素材になど、さまざまな用途で活用できる。
「撮りたいのは、ごくささやかな日常。喫茶店の開店準備中のような何かが始動する前の時間だったり、あまり人目に触れることがない自動販売機の補充作業中の様子だったり。あるいは道端でおばあちゃん同士がたわいない話に花を咲かせている光景や、なかなか第三者がカメラを向けることができない少年野球チームの練習のような風景もいいですね。自他を問わず、人であれ場所であれ、撮ってほしい対象がある方は気軽に応募してほしいなと思っています」
こうした“生活”は、彼が以前から映画を通じて切り取ることを試みている題材でもある。振り返れば、「自分が影響を受けてきた映画も、なにげない瞬間にカメラを向けているものだった気がする」と今泉さん。
「例えば山下敦弘監督の『リンダ リンダ リンダ』。女子高生たちが文化祭に向けバンド練習に明け暮れるという主題に目が行きがちですが、職員室で譜面をコピーするシーンや、好きな人から電話がかかってきた時になんとなく部屋の外に出る描写など、“ここを描くんだ⁉”という新鮮さがふんだんに盛り込まれているんです。後になって思えば、物語の進行に差し障りがないごく小さな出来事にも光を当てているところに、漠然と惹かれたんだと思います」
そしてその姿勢が自身の作品で顕著に反映されたのが、下北沢を舞台にした若者の群像劇『街の上で』だ。
「劇中、主人公はある自主映画への出演を依頼され、彼は撮影の前夜にスマホで自撮りをしながら演技の自主練習をします。結果的に彼の出演シーンは丸ごとカットされるのですが、あえて自主練シーンを描いたのは、その人知れず存在した“準備の時間”そのものが魅力的だと考えたから。
誰しもに大なり小なり、残念な結果に終わったり、日の目を見なかったりしたことで無為に感じた過程の時間があると思います。一人一人が持っているそうしたささやかな一幕を、映画を通じて少しでも肯定できないかなと。次回作に向けても、ずっと考え続けていることです」
ゆえに今回、3組の些細な“生活”に触れることで「自分が次に撮る長編映画への布石にもなれば」と言う。加えて演技の経験もなく、撮られ慣れてもいない一般の方を映像に収めることへの期待感もある。
「日頃は俳優たちによる劇映画を撮っている分、今回は演出ではどう工夫しても撮ることのできない尊い一瞬を収められることも楽しみな点。僕自身にとっても前例のない取り組みなので、どんなもの作りができるか、今からすごく楽しみです」
今泉力哉があなたの生活を短編映画にします
ショップ名:市民プール
価格:100,000円
あなた自身やあなたの身の回りの「生活」をテーマに、今泉力哉さんが短編映画を製作。販売数は限定3組を予定。最終的な購入者は今泉さんご本人による選定予定につき、希望者は購入の動機や、どんなシーンを撮ってほしいかなどの必要事項を「あしたのベストバイマーケット」内のフォームから記入のうえ、エントリーを。
思い当たれば、奮って応募を!
□ 残したい風景がある
□ 撮ってほしい人がいる
□ 今泉力哉作品ファン!
□ 一生残るプレゼントを贈りたい
□ 主人公になりたい