世の仕組みを垣間見せてくれた『猫と偶然』の装画
猫にまつわるエッセイ集を出した時にね、装丁家の名久井直子さんがこの銅版画をカバーと表紙に使ってくれたんです。本が完成したあと、タダジュンさんに連絡して買い取らせてもらったのが「1/1」とエディションナンバーが振られたこの版画。
カバーになった2匹をタダさんが選んで額装してくれました。本として刷られた複製が届いた後に、版画そのものがやってくる。この順番を経たことで、執筆という孤独に思える作業も人とつながっていて、一冊の本にいろいろな人が関わっているという世界の仕組みを実感できたんです。それが嬉しかったしずいぶん心の風通しが良くなった。
書斎で目にするたび物書きとしての人生の節目を思い出させてくれます。