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精神科医・春日武彦の人生最高のお買いもの「タダジュンの猫の銅版画」

人が欲しいと思うものには、その人の価値観や人生観が表れます。何を思い切って手に入れ、何を大切にしてきたか。“お買いもの”とは究極の消費行動であると同時に、自分の人生を彩るために何が必要なのかを教えてくれるものです。精神科医・春日武彦さんのベストバイ・ストーリーは?

photo: Satoshi Nagara / text: Hikari Torisawa

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世の仕組みを垣間見せてくれた『猫と偶然』の装画

猫にまつわるエッセイ集を出した時にね、装丁家の名久井直子さんがこの銅版画をカバーと表紙に使ってくれたんです。本が完成したあと、タダジュンさんに連絡して買い取らせてもらったのが「1/1」とエディションナンバーが振られたこの版画。

カバーになった2匹をタダさんが選んで額装してくれました。本として刷られた複製が届いた後に、版画そのものがやってくる。この順番を経たことで、執筆という孤独に思える作業も人とつながっていて、一冊の本にいろいろな人が関わっているという世界の仕組みを実感できたんです。それが嬉しかったしずいぶん心の風通しが良くなった。

書斎で目にするたび物書きとしての人生の節目を思い出させてくれます。

タダジュンの猫の銅版画
猫との時間や思い出から、詩的で私的な連想が続くエッセイ集のために刷られた6匹のうちの2匹。春日さん自身エッチングが好きで自ら刷っていたことも。

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