ウィーンやオブジェに興味を持つきっかけに
独立する前、インテリアショップ〈モダンエイジギャラリー〉で働いていました。近くにハナエ・モリビルがあり、地下のアールデコ専門店に、休み時間によく通っていたんです。これはそこにあったものです。
19世紀後半から20世紀初頭にかけて職人による工芸品を復興しようという「アーツ・アンド・クラフツ運動」が起こったのですが、〈Werkstätte Hagenauer Wien〉はその頃にウィーンにできた工房の一つ。店主は僕に、このオブジェの歴史的背景などを教えてくれました。この工房は真鍮や銅細工で知られるのですが、これは人物は木でできていて、槍は真鍮というちょっと珍しいもの。数年後、ハナエ・モリビルの解体が決まり、その店も閉店することに。
店主に交渉すると、「安くするよ」と言ってくれ、古着などを売って買いました。何の役にも立たないオブジェだけど、自分の原点になりました。独立後、初の買い付け先はウィーンでしたし、モダンファニチャーの中にプリミティブなものを置く面白さも知りました。〈Playmountain〉で変わったものを売るきっかけになったのもこれ。オフィスの神棚のような場所に飾っていて、僕にとっては神様的な存在なんです。