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武者小路千家第15代家元後嗣・千 宗屋の人生最高のお買いもの「武野紹鷗と珠徳の茶杓」

人が欲しいと思うものには、その人の価値観や人生観が表れます。何を思い切って手に入れ、何を大切にしてきたか。“お買いもの”とは究極の消費行動であると同時に、自分の人生を彩るために何が必要なのかを教えてくれるものです。武者小路千家第15代家元後嗣・千 宗屋さんのベストバイ・ストーリーは?

photo: Yoichi Nagano / text: Masae Wako

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買い初めの茶道具は、500年昔の“茶人の刀”

茶杓は茶人の刀である、とよく言われますが、私もこののびやかさと姿形の美しさに魂を奪われた。それが高校1年生の夏でした。出会ったのは茶会で訪れた大阪の茶道具商。一つは千利休の師匠である武野紹鷗(たけのじょうおう)の作で、もう一つはわび茶の祖、珠光(しゅこう)ゆかりの珠徳(しゅとく)の作。一双入りになった2つの茶杓は高校生に買える価格ではなかったものの、夢にまで現れて……1週間悩み、貯金を取り崩してなんとか手に入れました。

専門の職人がいる茶碗や釜と違い、茶杓は茶人が自分の手で削り魂を込める唯一の茶道具。つまり人に近いんです。茶杓を手に古(いにしえ)の茶人と対話する喜び、シンプルゆえにごまかしの利かない美しさ。今もって自分の美を見る物差しとなっています。

「武野紹鷗と珠徳の茶杓」
中ほどに節のある中節(なかぶし)の茶杓(右)は、室町時代の茶人・珠光の茶杓師だった珠徳の作。左は武野紹鷗の作。筒書きは武者小路千家第5代家元による。

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