Live

編集者・岡本 仁の人生最高のお買いもの「掛井五郎の彫刻」

人が欲しいと思うものには、その人の価値観や人生観が表れます。何を思い切って手に入れ、何を大切にしてきたか。“お買いもの”とは究極の消費行動であると同時に、自分の人生を彩るために何が必要なのかを教えてくれるものです。編集者・岡本 仁さんのベストバイ・ストーリーは?

photo: Satoshi Nagare / text: Keiko Kamijo

連載一覧へ

芸術作品を所有するということ

彫刻家・掛井五郎を知ったのは京橋のポスタルコで彫刻を見たことがきっかけだ。後に知人からの知らせで松濤の〈ギャラリーTOM〉で展示があると知って見に行った。買えるということは知らなかったが作品には値段がついていて、少し背伸びをすれば手に入れられる価格。思い切ってこの彫刻を家へ迎え入れることにした。

僕は以前より、洋服や食べ物は高価なものでも買うのに、どうして絵画や彫刻は買おうとしないのか、ということに興味があった。この彫刻と一緒に暮らしていると「作品の意味なんて考えなくていいじゃないか」と言われるような気持ちになる。手に入れた経緯も含めて、自分にとっての買い物とは何かを考えるきっかけを与えてくれた。

「掛井五郎の彫刻」
掛井五郎は1930年生まれの彫刻家であり、50年代から立体作品を主に油彩やエッチング等技法にとらわれない自由な作品を発表。独自の表現を追求した。

連載一覧へ