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イラストレーター・よしいちひろの人生最高のお買いもの「ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインのドアハンドル」

人が欲しいと思うものには、その人の価値観や人生観が表れます。何を思い切って手に入れ、何を大切にしてきたか。“お買いもの”とは究極の消費行動であると同時に、自分の人生を彩るために何が必要なのかを教えてくれるものです。イラストレーター・よしいちひろさんのベストバイ・ストーリーは?

photo: Satoshi Nagare / text: BRUTUS

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良い買い物は「人」との思い出。設計士とのもの作りの象徴となったアトリエの扉

2022年の秋からリノベを計画して、去年の春に付けました。家を建てたのが10年前で、息子が自分の部屋が欲しい、っていうタイミングでライフステージが変わって、リノベをしようってことになって、設計を〈straight design lab〉の東端桐子さんにお願いしました。

リノベに便乗して自分のアトリエを家の中に造ることにしたんですけど、こういうのあるよ、って東端さんが教えてくれた。ちょっといい値段だったけど、きゅっと曲がってるのは見たことないし、結構ずっしりとしていて見た目も素敵。

ドア自体は予算がなくて自分で塗りました。色を選ぶ時も、迷っていたら東端さんに、「無難な色選んじゃいがちだけど、塗り直せばいいんですよ」って言われて、確かに!と思いながら緑色に。私は想像でイラストを描けないタイプなので、全部アイテムを検索するんですけど、仕事をしているつもりが買い物をしちゃってることが多くて、物欲が私のクリエイションを支えています。

その中でも良い買い物だったな、と心に残るものは同時に「人」が思い浮かぶものが多いなと感じていて、東端さんとのもの作りを象徴しているドアノブはまさにそう。人生のキーとなった買い物です。

ウィーン出身の哲学者、ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインが1925年頃にデザインしたドアハンドル。内と外とで形状が異なり、カスタムも可能。

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