「クラシックの聴き方がどんどん変わってきていると思います。イベントを始めた10年前とは違う広がりや深さが出てきている」。そう話すのは著述家でプロデューサーの湯山玲子さん。
爆クラ=爆音クラシックと題し、2011年から約月1回のペースで、多ジャンルのゲストを迎えクラシック音楽の新しい聴き方を提案するトーク&リスニングイベントを主宰。
2018年からは「爆クラアースダイバー」と題し、世界的な音響調整技術者である石黒謙との共同プロジェクトを展開。遊覧船や廃トンネルなどを会場に「クラシック音楽を野山に放つ」というコンセプトのもと五感で音楽を聴く音楽環境体験シリーズも開催してきた。
クラシック音楽を味わい尽くしてきた湯山さんが次に仕掛けるのが、「交響ラップ」だ。クラシックをもっとクリエイティブに楽しもうと、ジャンルのぶつかり合いを目論見み、今や世界最大のエンタメコンテンツと謳われるラップで挑む試みだ。
「その名の通り、オーケストラによる交響曲の生演奏をバックトラックに、ラッパーたちが現代のセンスで紡ぐ言葉で新たな響きを表現する」前代未聞のコンサート。
ストリートとアカデミックなハイカルチャーという、決して交わることのない両ジャンルと思われるが、実はある種の親和性があるとも。
「私も含め言葉のないクラシックを聴く方の心や頭には、実は多くの言葉が発生しては消えている。今を生きるラッパーたちが、クラシックの楽曲からどんな言葉を掘り出すのか?
『モオツァルトのかなしさは疾走する。涙は追いつけない。』と紡いだ小林秀雄のごとく言葉と音との化学反応に期待したい」。かくして、世界中のクラブで踊り倒した湯山さんが惚れ込む錚々たるメンツが名を連ねた。
「クラシックとヒップホップ、両方の橋渡しになってくれるはずの菊地成孔は林光の映画音楽で参戦し、クールな女性ラッパー、ゆるふわギャングNENEは、坂本龍一による『Anger』の音の巨魁にどう融合するのか。
ロックな一匹狼、呂布カルマはジムノペディをラップし、若干22歳の最注目の若手現代作曲家・梅本佑利による新曲“MCバトルのためのスーパー・サンプリング クラシック・ボム”ではDOTAMAとHUNGER (GAGLE)という才人が激突。 そして大トリは、志人×ベートーヴェンの交響曲で大団円でしょうね」と、見どころは語り尽くせない。
しかも会場となるのは、日本が誇るクラシック音楽の殿堂、サントリーホール。一夜限りの超越境コラボ、見逃す手はない!