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“平均的白人バンド”が作った比類なき傑作。『AWB』アヴェレイジ・ホワイト・バンド。バラカンが選ぶ夏のレコード Vol.1

ピーター・バラカンが選ぶ32枚のレコードストーリー。「ピーター・バラカンがオーナーのリスニングバー〈cheers pb〉で夏にかけるレコードの話を聞きました」も読む

illustration: TAIZO / text: Kaz Yuzawa

『AWB』Average White Band(1974年)

“平均的白人バンド”が作った
比類なき傑作

アヴリジュ・ワイト・バンドがデビューしたのは僕が日本に来る1年ほど前。デビュー・アルバムの『Show Your Hand』も大好きで、働いていたレコード店でよくかけていました。とてもファンキーで、その場の雰囲気が明るくなるレコードです。そして翌74年の夏、僕が日本に来てすぐに出たのがこの2ndアルバム。一段と勢いがついたファンキーなサウンドが最高な傑作です。

デビュー・アルバムはMCAから出ましたが、バンドはその後アトランティックに移籍し、この2ndアルバムでは名プロデューサーのアリフ・マーディンを迎えて、アメリカで録音されました。それだけレコード会社の期待も大きかったんでしょう。

アヴリジュ・ワイト・バンド、「平均的な白人のバンド」というこの一風変わったバンド名は、スコットランド人の俺たちがいくら頑張っても、黒人のホンモノのファンキーなノリには敵わないかもなという英国らしい自嘲的な感覚ですね。

でもそんな彼らの自意識をよそに、このアルバムはアメリカを中心に大ヒットとなり、全米アルバム・チャートで見事1位を獲得します。そしてシングル・カットされた「Pick Up The Pieces」も、インストゥルメンタル曲としては稀有ですが、ビルボード・チャートでナンバー・ワンに輝きました。

このアルバムが出た70年代半ばは、イギリスでファンクやソウルが本格的にブレイクした時期です。この時期には彼らのようなホンモノから形をまねただけのニセモノまで、かなりすごくたくさんのバンドが玉石混淆で活動していました。そんな中でも、アヴリジュ・ワイト・バンドは別格です。

彼らは83年に一度解散しますが、89年に再結成して現在も活動を続けています。僕は数年前にライヴを観たんですが、リーダーのアラン・ゴリーとオニー・マキンタイヤが健在で、当時の勢いはないものの、相変わらずファンキーな演奏を聴かせてくれていました。こういう再結成なら大歓迎です。もしチャンスがあったら観に行くことをおすすめします。

Average White Band

side A-5:「Work To Do」

朝の生放送をやっていた頃、放送前に「さあ、今日も仕事を頑張るぞ」という気持ちで、よくこの曲をかけていました。今回の32枚の皮切りにふさわしいでしょ。オリジナルはアイズリー・ブラザーズ。ヴォーカルはリズム・ギターのオニー・マキンタイヤが担当。元気が出ること請け合いです。