シュウマイはもともと「焼麦」と書くんですよ
これまで70冊以上のレシピ本を出版し、20余年前に発表された記念すべき第1作『ウー・ウェンの北京小麦粉料理』(高橋書店)が、今も多くのファンに読み継がれているウー・ウェンさん。そんな小麦粉使いの達人に、簡単かつ格別においしいシュウマイの作り方を伝授していただいた。
「日本のシュウマイはゴロッと丸くて肉あんが見えているものが多いけど、中国ではもともと“焼麦(シャオマイ)”と書くように、肉あんを薄い皮で包んだ様子が麦の穂に見えることが名前の由来なんです。本来シュウマイは“皮を味わい、皮の美しさを賞でる”ものなんですよ」とウー・ウェンさん。
だから彼女にとって、シュウマイは皮から作ることが鉄則。本日は豚肉ではなく軽やかな味わいの鶏肉を使い、秋の食材をトッピングして季節を楽しむシュウマイを作ることに。「春ならそら豆、夏は枝豆、これからの季節は松茸もいいわよね。基本的なあんの作り方を覚えておけば、あとは自由自在。今は何でもお金で手に入る時代だけど、だからこそ一番贅沢なのは“手作り”じゃない?」
コツはとてもシンプル。皮は温度、あんは混ぜる順番を守ること
用意する小麦粉は100g。これでシュウマイの皮20枚分だから、自宅で日常的にさっと作るにはちょうどいい分量だ。
「シュウマイの美しい形を作るためには、直径10㎝の薄い皮を作ることが大切。水やぬるま湯で作る生地もありますが、熱湯を加えるとグルテン由来の粘りが抑えられて生地が変形しにくくなるので、シュウマイの皮は熱湯で作ります。温度の変化で生地の固さがどんどん変わるから、温度はきちんと守ってね。もっちりとした皮に仕上げるには温度が命です」
ちなみに、熱湯で捏ねると小麦粉のデンプン質が糊化して柔らかくしっとりとした皮に仕上がり、低い水温で捏ねるとグルテンが形成され、より弾力や伸展性が生まれる。水餃子の皮や麺は水やぬるま湯で、シュウマイや鍋貼(ゴーティエ/焼き餃子)の皮は熱湯で捏ねるのが基本だ。
「小麦粉は奥が深い。粉から皮になるまで、ドラマチックな変化が見られるのが面白くて。どうすればもっと仲良くなれるかと考えるのが楽しくて仕方がないの(笑)」
あんは、鶏肉を使うならひき肉の状態で購入し、豚肉の場合は薄切り肉を自分で荒みじんに叩くのがウー・ウェンさん流。
「鶏のひき肉はモモかムネか、部位が表記されているけれど、豚肉は“豚ひき肉”と書かれているだけで部位が分からないでしょう。だから自分で使いたい部位を買って叩いた方が絶対おいしくなるんです。あんの調味料は、お酒などが水分を与える化粧水、オイスターソースや胡麻油は生地の水分を留める保湿の役割をしてくれるので、一見小さなことでも調味料を加える順番はとても大事」
さて、蒸し上がった3種のシュウマイは、口溶けのよい皮が何ともおいしくて「シュウマイは皮!」であることを実感する。プリプリとした鶏肉のあんから滲み出る健やかな旨味にウットリし、塩辛さはないのに味わい豊か。これ、何個でも食べられちゃうやつ…!
それにしても、粉の状態から捏ね上げ、切って伸ばしてあんを包む、その一連の動作の見事なことと言ったら。あん作りも含めて最後に蒸し上がるまで、ものの40分ほど。この手際さえ身につけられたなら、ウー・ウェンさんの言う通り、“買ってくるより簡単”なのだ。あとは鍛錬あるのみ!
「秋のシュウマイ」レシピ
さあ、作ってみよう!
○材料(20個分)
・生地
小麦粉(薄力粉) 100g
熱湯 70ml
・あん
鶏モモひき肉 300g
胡椒 少々
酒 大さじ1
生姜 15g
醤油 大さじ1
オイスターソース 大さじ1/2
玉ねぎ 1/4個
パン粉 10g
太香胡麻油 大さじ1/2
・この日のトッピング
銀杏、天津甘栗、サツマイモ 適宜(20個分)
○作り方
STEP1 熱湯で生地を作る
STEP2 生地をまとめる
STEP3 生地を捏ねる
STEP4 生地を切り分ける
STEP5 生地を伸ばす
STEP6 あんを作る
STEP7 成形〜蒸す