ライトなモチーフを描いた厚塗りの画面に映るもの
長嶋五郎の《Fruitfully Head 1》
長嶋五郎は雑誌や広告にイラストを提供する傍ら、水彩やアクリル、色鉛筆など画材を替えて描き続けてきました。その四半世紀ほどのキャリアの末に辿り着いたのは、抽象化された幻想の山や、愛する音楽家など会ったことのない人物の油彩画です。
ポップで軽快なモチーフに対比して、厚く塗り重ねられた絵具の層からは、作家が画面と向き合った時間の豊かさが伝わってきます。一方で、どこかほの暗さを感じる画面には、作家のルーツである幼少期の美術体験や反戦教育の影響が色濃く表れ、彼の内面の映し鏡になっているのも面白いです。
(TRINE GALLERY/大池明日香)

2024年/キャンバスに油絵具、アクリル絵具、メディウム/53×45.5cm