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キュレーター・山峰潤也さんに聞く、2022年観逃せないアートフェス

この夏、高水準の作品が揃うアート・フェスが日本各地で開催される。そこで国内外で活躍する若きキュレーター、山峰潤也さんに、観逃せないフェスを3ヵ所選んでもらった。この夏はアート・ピクニックがオススメです。

edit&text: Kaz Yuzawa

世界基準のフェスで楽しく学ぶもよし、
地域密着型フェスで豊かに過ごすもよし

BRUTUS

早速ですが、この夏観に行くならココという、山峰さんオススメのアート・フェスを教えてください。

山峰潤也

この夏のアート・フェスを概観すると、とてもバリエーションに富んだラインナップだと感じます。その中でオススメとして選んだのは3ヵ所。

まずオーセンティックな『あいち2022』。こちらはワールドスタンダードを満たす都市型のアート・フェスです。そしてもう少しライトなユーザー向けには、お祭り的な要素もある里山型の『越後妻有 大地の芸術祭 2022』。3ヵ所目は、復興という社会性や土地の歴史性とアートとのつながりを構築している『Reborn−Art Festival 2021-2‌2』です。

世界のコンセプチュアル・
アーティストが愛知に集う

B

それぞれ特色がありますね。ではそれぞれのフェスの見どころを、『あいち』からお願いします。

山峰

芸術監督を毎回選任する『あいち』は、芸術監督が掲げるテーマがその年の重要な指針になります。今年の芸術監督である片岡(真実/森美術館館長)さんが掲げたテーマは「STILL ALIVE」。

一見、抽象的に聞こえますが、コンセプチュアル・アーティストの河原温が70年代以降、世界各地から「I'm still alive」という文面の電報を発信した作品シリーズ《I'M STILL ALIVE》に端を発するテーマです。そこには、「生きている」という共有可能なレベルから、アートの文脈でパンデミック後の世界を志向しようとする姿勢が感じられます。「STILL ALIVE」というテーマの下に、世界のコンセプチュアル・アーティストが集う今回は、エネルギッシュな展示がいろいろ観られそうで、期待が膨らみます。

アート・フェスが
地方都市でできること

B

次は『大地の芸術祭』について。

山峰

『大地の芸術祭』の場合は、大きな設立理由として観光誘客、越後妻有周辺に暮らす人々の生きるモチベーションになるといった地域振興への貢献がありました。2000年の設立当初は相当な抵抗があったようですが、問題を一つ一つ丁寧にクリアして、里山型アート・フェスとして地域に受け入れられてきた歴史があります。

フェス自体も回を重ねるごとに見応えのあるものに成長して、リピーターも確実に増えているし、アートと里山の融合した環境を求めて移住してくる若い作家もいるようです。3年に1度の本祭に加え、年間を通じて触れ合える約200点の常設展示があり、季節ごとの企画展や林間学校を実施するなど、今や越後妻有は「アートの町」としてたくましく成長しています。

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3つ目は『Reborn-Art』です。こちらはアートと音楽と食という複合的なフェスですね。

山峰

『Reborn-Art』は、東日本大震災からの復興という大テーマの下に、2017年から2年に1回開催されているフェスティバルです。事業性が高いとは決して言えないフェスを、人々の思いを結んで“忘れてはいけない物語”につなげている点は、ホントに素晴らしいと思います。

B

簡単なことではありませんね。

山峰

そこにはクリエイティブな行為へのリスペクトを共有し、かつ人を盛り上げつつ動かせるプロデューサーの存在が不可欠です。その点ではやはり、小林武史さんの存在が非常に大きい。彼が中心となりハブとなって、いろんな人たちを巻き込んでいるんだと思います。

アート作品というのは基本的に、その場に行かないと体験できない限定的なものですが、そこに音楽が重なることでマスな展開が可能になるし、小林さんがやるなら関わりたいという人も少なからずいるはずです。その一方でアートも音楽も食も、忘れてはいけない物語への導線であることをわきまえている。僕のようにキュレーションを仕事にしている者から見てもとても興味深いフェスだと思います。

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では最後に、この夏アート・フェスに行こうと思っている読者にアドバイスをお願いします。

山峰

アドバイスではないのですが、いろいろなアート・フェスを観てきている僕なりの段取りをお教えします。現地に着いたらまずインフォメーションに行って会場図をもらい、20〜30分かけてその日観て回る順路を決めるんです。

アート・フェスは広大な会場に作品が点在しているので、効率的な回り方をしないと回り切れなくなります。オススメの鑑賞時刻があったりもしますから、案内係を活用するといいと思います。そうすれば、同じフェスに行った友達と後日答え合わせをするときにも、「え、そんな展示あったの?」なんて恥をかかずに済みます(笑)。

あともう一つ。これは『あいち』に行こうと考えている方に声を大にして言いたいのですが、熱中症対策は絶対に忘れないでください。コロナ対策も大切ですが、8月の名古屋の暑さはホント鬼のようですから。