Q.初心者はどんな作品を
買うのがオススメ?
まず自分が好きな作家や絵のタイプはどんなものか、いま一度考えてみたい。いや、アートに限らず興味あるものからアプローチしてみよう。例えば音楽が好きなら、お気に入りのレコジャケに使われた作品が欲しい!という動機を大切に。それが手に入らなくても、その作家を掘り下げるきっかけになるだろう。アートには絵、彫刻、写真、版画……とさまざまなメディアの作品があるし、価格帯はとても幅広い。映像作品も購入できるが、DVDやUSBメモリーなど記録メディアが多様なので、時代とともに変化する保存方法には注意が必要。
Q.作品はどこで探して、
買えばいいの?
ギャラリー、百貨店、オークション、ネット、ギャラリーが多数出展する見本市=アートフェアもオススメ。ギャラリーは“作家を育てる”役目を持つので、作家をより身近に感じられるのが魅力!そして、社会的なステータスを持つのが百貨店だ。ゆえに安心と保証を買うということでもある。オークションでは既に評価されている作家の作品が取引されるので、価格も張るが値下がりのリスクも少ない。アートフェアでは数百点もの作品を一度に見ることができる。日本最大級の『アートフェア東京』には、ぜひ一度は足を運んでみたいもの。
Q.オークションに参加することはできる?
ハードルが高いと思われがちだが、実は誰でも参加可能。オークションハウスは海外のクリスティーズやサザビーズが権威だが、日本でもSBI、シンワアート、マレットジャパンなどがある。特に、バンクシーなどストリートアートも扱うSBIはBRUTUS読者にもオススメ。まずはネットでカタログを入手し、事前に開かれる内覧会で出品作をチェックしたい。会員登録と会費が必要か、手数料や配送料についても聞いておこう。海外のオークションには出席せずとも書類を送付すれば参加できるし、電話での参加や代理人を立てるのもOK。
Q.買う前に確認しておくことは?
購入した作品が大きすぎて部屋に入らないっ!という、うっかりミスは意外によくある話なんだとか。マンションの高層階に住んでいる場合、エレベーターに入らなければ外から吊って運べるかも確認した方がいい。ギャラリーでは作品を数日間キープしてもらえるので、その間に自宅の入口や壁の採寸をすればよし。また、引っ越し後の家に飾ることを想定しているなど、場合によってはギャラリーで長期の預かりをしてくれることも。ただ、支払いを済ませていることが条件だ。あとは、ちゃんと支払いができるかお財布と相談あるのみ!
Q.良いギャラリーの見分け方は?
知名度のあるアートフェアに参加しているギャラリーは、信用度も高いと考えていい。しかし、海外の有名なギャラリーはマーケットへの影響力がある客をつかむため、日本人の初心者には売り渋ることも。まずは国内のギャラリーからアプローチ!さらに、ギャラリーと作家のつながりにも注目を。定期的に作家の情報を知らせてくれたり、作品について丁寧に話してくれるなど、作家に責任を持って運営しているところが◎。また、展覧会のプレビューはギャラリストや作家に会って探るチャンス。誰もが参加できるので、日時を問い合わせてみて。
Q.プライマリー、
セカンダリーの違いって?
一口に言ってしまえば、作家の“初物”を扱うのがプライマリーのマーケット。それ以外の一度購入歴がある作品はすべてセカンダリーの扱いとなる。よって、プライマリーギャラリーが売った作品をすぐに買い戻したとしても、それはセカンダリーのマーケットに乗ったことになる。ちなみに、目利きのコレクターやセカンダリーを扱うギャラリーは、プライマリーのマーケットで作品を買ってしばらく寝かせ、頃合いを見てセカンダリーのマーケットで高く売ることもしばしば。アートはひとえに新品/中古という区分けはできないことに注意。
Q.予算が少ないのですが、
値切ることはできる?
ギャラリーや作家にもよるが、不可能はない!トライする価値はある(もちろん“お得意様”になれば状況はガラッと変わる)。さらに、ギャラリーで実際に買うか買わないかは別として“買うそぶり”を見せることもミソだとか。ギャラリーから引き出される情報や応対も格段に変わるそう。また、少々セコいやり方だが、穴場はアートフェアの最終日。特に国外から参加しているギャラリーは、持ち帰るより売ってしまいたいので交渉しやすいとか。ただ支払いは現金かクレジットカードが鉄則で、その場で決済すること(カードの分割払いはOK)。
Q.将来値上がりする作品が
欲しいのですが。
ズバリ、既にマーケットで作品の評価が安定している高い作品を買うこと(相当な目利きでない限り)。逆に言えば、ステータスがまだ確立されていない作品は値下がりのリスクがあるということ。基本的には、主たるオークションハウスが拠点とする欧米のマーケットで取引される作品が値上がりするケースが圧倒的。だが、金銭目的の投資としては、アートは即金性がないので要注意。株とは大きく異なるというわけだ。金銭的価値があり資産の一つともいえるアートはむしろ不動産に近いかも。“都心の駅チカ物件”をチョイスするのが安全圏内。
Q.写真作品は
何枚もプリントできるのに、
なぜ安くならないの?
エディションと呼ばれる“限定数”を設定しているから(もちろん、アラーキーなど例外的な作家もいる)。出し惜しみしてエディションを設けることもあり得る話だが、作家が責任を持ってリリースするためには、枚数に限りがあるという事情が。例えば、大判プリントのゴミや塵を払う作業を考えただけでも相当な労力と時間が必要だろう。ちなみに写真作品は、撮影された時期とプリントされた時期が近いほどバリューがあるのだそう。作家と同時代のイメージが、作品に最も反映されていると考えられるためだ。
協力/小山登美夫(小山登美夫ギャラリー)
小松隼也(長島・大野・常松法律事務所)
寺田倉庫