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アートコレクターのはじめて物語。玩具メーカー勤務・黒木健一

アートを多数収集するコレクターにも、開眼するきっかけとなった最初の一歩があったはず。今のコレクションを築く、そのはじまりのエピソード、アートとの出会いを玩具メーカー勤務・黒木健一さんに語っていただいた。

photo: Keiko Nakajima / illustration: Masaki Takahashi / text: Keiko Kamijo

アートを家に飾ったら森林浴をしているみたいに気分が良くなった

もともと収集癖があり、洋服などを収集していた黒木健一さんがアートに目覚めたのは2011年。東日本大震災で誰もが悲しみに暮れていた時に、偶然香川県直島を訪れた黒木さんは、草間彌生の大きな作品《南瓜》が佇む姿を前に、心がすっと安らぐのを感じた。

「草間彌生は知っていましたが、手に入れたいと思ったのはこの時が初めて。縁あってオークションで購入できたのですが、作品を家に飾ったら森林浴をしているみたいに気分が良くなった。そして収集癖に火がついてしまったんです」と黒木さん。

収集癖を自覚していたので、作品購入には厳密なルールを設ける。例えば「忘れてはならない歴史」「苦悩や性癖をさらけ出す」等のキーワードを含む作品かどうか。10×15cmのポストカードサイズの作品は積極的に購入する等。条件をメモに書き出すが、作品の数は増えるばかりだ。最近では自宅近くで『高井戸芸術祭』を定期的に開催し、コレクションを公開する活動を続けている。

アーティスト・草間彌生《おもいで》
草間彌生の《おもいで》2011年、アクリル・紙、14.8×10cm。2011年にオークションで購入した。黒木さんの自宅廊下にはこのほかに李禹煥や河原温らの作品が並んでいる。©YAYOI KUSAMA