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アートコレクターのはじめて物語。広告代理店勤務・鎌田道世、白木聡

アートを多数収集するコレクターにも、開眼するきっかけとなった最初の一歩があったはず。今のコレクションを築く、そのはじまりのエピソード、アートとの出会いを広告代理店勤務・鎌田道世、白木聡さんに語っていただいた。

初出:BRUTUS No.1010「小さなアートと暮らしたい。」(2024年6月17日発売)

photo: Keiko Nakajima / illustration: Masaki Takahashi / text: Keiko Kamijo

いい作品は必ず評価される。でもそれがいつかはわからない

30年以上にわたり作品収集を続け、ギャラリーやアーティストとともに時代を並走する白木聡さん、鎌田道世さん。2人で初めて購入したのは絵画作品だ。

「1993年に行った佐谷画廊の展覧会で、2代目の佐谷周吾さん(現・シュウゴアーツ)が手がける新世代の展覧会で興味を持ちました」と白木さん。「最初は現代アートって理解ができなかったのですが、だんだんと色、形、感情等、こう見ればいいのかなとわかってきて。この絵はリンゴと色の関係が気に入った」と鎌田さんは振り返る。

その後コレクションは膨れ上がり、数百点にも及ぶが、すべての作品購入は合議制で決めてきたという。2人で世界中のギャラリーやアートフェアに足繁く通い、その作品のどこがいいか、購入したいか等をよく話し合い、時には数年かけて結論を出す。

白木さんは言う、「いい作品は必ず評価される。でもそれがいつかはわからない。それが、アートの難しくて面白いところだと思います」。

小林正人の《写生》

画家・小林正人《写生》
小林正人の《写生》1993年、キャンバス・油彩。奥の棚には、画家の五月女哲平による立体作品と縄文土器のかけらが置かれる。自宅ではアーティストを招いて食事をしたりと交流も多い。